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2009-12-10 07:55

検察は鳩山兄弟の“とん走”を見逃すのか

杉浦正章  政治評論家
 鳩山兄弟には毎月サンタクロースが来るらしい。母親が秘書を通じてそっと事務所にカネを1500万円置いて行く。だから兄の首相・鳩山由起夫は「驚いた」、弟の鳩山邦夫は「寝耳に水」と“びっくりした真似”をする。それにしても骨肉の争いは極まれりということだろうか。ことがばれるやいなや、弟邦夫が「贈与税を払う」と修正申告の方針を表明し、兄の対応を「犯罪行為だ」と決めつけた。脱税と申告漏れは紙一重と言われるが、兄弟共に「脱税の犯罪行為」から逃げ出すために懸命の日々であり、筆者が12月2日に予想したとおり、「申告漏れ」で贈与を認める流れになってきた。検察が「脱税」を見逃せば、甘いと言うしかない。

 最初、邦夫の発言を聞いたとき、兄への助け船かなと思った。贈与とみなされれば修正申告をして贈与税を支払うという「方式」は、昔から政治家が脱税逃れでとってきた対応だからである。しかし一般庶民の家とことなり、大資産家の旧家には特別の親子・兄弟関係があるに違いない。その発言から知る限り、骨肉の争いとしか言いようがない。邦夫の発言をたどれば、既に7月から「国会にはハトが2羽飛んでいる。黒いハトと白いハトだと言われるが、私が白いハトの鳩山邦夫だ。兄は相当黒いハトになった」と批判している。加えて8日の発言は「親子の貸し借りなどという論理は、国民の常識としては通用しない」と由起夫の秘書が「母親からの貸付金」としていることを、まさに“突き崩した”のである。加えて「私が兄と違うのは、『新声会』(資金管理団体)の政治資金収支報告書に虚偽記載という犯罪行為がないことだ」と由起夫の処置を犯罪行為と決めつけた。

 邦夫の“戦略”は、自らを「修正申告→納税」で逃げ切ると共に、兄をまさに蹴落とそうとしている形となっている。これをチャンスとみたか、事前に打ち合わせがあったか、自民党政調会長・石破茂は邦夫発言について「同志である鳩山邦夫さんがきちんと明らかにされた。総理の非を正して行くものだ」と述べている。明らかに“助け船”などという甘いものではない。しかし結果として、自らを救うために兄をも救うことになってきているのは確かだ。由起夫もこれを奇貨としたか、「私も法に照らして適正に処理したい。そのような判断になれば、そうする」と述べた。参院本会議答弁と同じだ。その時に筆者は「明らかに『脱税』を『申告漏れ』で逃れようとしているのが、首相・鳩山由紀夫の戦略だ」と予想したが、その方向がますます鮮明になってきたことになる。核心であるのは11億ずつ22億のカネが兄弟に渡った事実だ。これから目をそらしてはなるまい。

 民放テレビ司会者は「ゼネコンからもらったわけではない」(古館伊知郎 )と首相をかばう風潮があるが、自民党政権だったら口を極めて批判しているだろう。どう見ても兄弟共に相続税または贈与税回避のための、政治資金団体経由の母親の資金移転、つまり「脱税」であると思えるからだ。兄弟共にその疑いが濃厚である。そして「知らない」と秘書のせいにしようとしている。邦夫は、言えば言うほど“目くそ鼻くそ”のドグマに陥ることを知るべきだ。兄弟の母親が、2003年から~08年の6年間に、自己名義の銀行口座から計約36億円を引き出し、現金化していた意味がようやく分かってきた。現金の移動なら法の目をくぐりやすい。東京地検特捜部は現金化された資金が、鳩山兄弟の政治資金に充てられた可能性もあるとみて、調べているという。首相であろうと、自民党議員であろうと、法の正義は執行されなければなるまい。由起夫の秘書は「故人献金」の虚偽記載で政治資金規正法違反は免れまいが、もっと大きな「脱税」という巨悪を検察は見逃すのか。古来、納税は兵役とともに国民最大の義務だった。その根幹が崩れかねない。首相が税を逃れれば国民も逃れる。
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