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2009-12-18 10:43

(連載)鳩山対米外交は、故意か?過失か?(1)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 普天間から名護市キャンプ・シュワブ沖への米海兵隊基地移設を含む日米合意は、鳩山政権によって反故にされることがほぼ確定した。鳩山首相は、「沖縄県民の思いが最も重要」「日米合意は重視する」「結論を先送りし続けるのはよくない」「連立与党合意も重視する」などと、色々なことを言ってきた。11月に米国のオバマ大統領と会見した際には、「私を信じてほしい」とも言った。迷走を続ける鳩山氏の発言に対して、遅まきながら日米関係に与える悪影響の深刻さを理解し始めたらしい岡田外相や北沢防衛相が、現行の日米合意通りの内容で年内に決着するよう鳩山氏に進言するなどしたものの、鳩山氏は聞く耳を持たなかった。そして、結局鳩山氏は、問題解決を先送りし、移設先として辺野古以外を検討するという結論を出した。これが日米同盟に与える影響は、改めて言うまでもないことであろう。

 現行の日米合意が破棄されるとなると、普天間飛行場の移設は行われず、したがって、それを前提として成り立っているグアムへの海兵隊の移転を含む米軍再編自体がストップする。こうなると、米国側の選択肢としては、普天間をそのままにして米軍再編自体を凍結するか、海兵隊を全てグアムに引き上げるか、のどちらかしかなくなるが、後者の選択肢は、ごく一部の孤立主義者が支持しているにすぎないから、普天間はそのままになるということになる。鳩山氏は、「地元の思いを大切にする」と言っているが、「世界で最も危険な基地」とも呼ばれる普天間飛行場の固定化につながることが、「地元の思い」に叶うとは到底思われない。安全保障問題に関しては、地元の感情に反してでも実施しなければならない決断というものもあるが、こと今回に限っては、普天間飛行場を名護市キャンプ・シュワブ沖に移設することが地元の感情と安全保障上の要求を両立させる唯一の解であった。

 上記のような鳩山政権の背信行為に対して、米国側は、極めて辛抱強く対応してきた。10月に来日したゲーツ国防長官は、「日米合意は最終合意であり、一切の修正はあり得ない」としてきた米政府の立場を軟化させ、「名護市の要求に従って、50メートルほど沖合に移動しても構わない」と表明した。さらに12月に入ってからの日米事務レベル協議では、「現行の日米合意を履行するのならば、日米地位協定に環境条項を盛り込んでもよい」とまで提案してきたと伝えられている。これは、予想をはるかに超える破格の提案であり、日米同盟を米国が極めて重視していることの証左である。そもそも、日米地位協定に環境条項を盛り込むよう要求していたのは日本側であり、その点に関して譲歩したにも関わらず、普天間移設問題を振り出しに戻すと鳩山政権が決断したことは、到底同盟国のやるべきことではなく、米側の当惑と不快感は察するに余りある。(つづく)
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