国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-01-07 09:38

低金利政策は必要な国際協調の一環である

塚崎 公義  久留米大学准教授
 日本では、長期にわたって超低金利時代が続いている。これは預金者にとって愉快な事ではないが、不況に喘ぐ日本経済にとっては必要な事である。銀行預金の金利が低いのは、銀行の利益のためではない。銀行は相互に競争しているので、「仕入れ値」である預金金利が下がれば、「売り値」である貸出金利も下げる。したがって、預金金利の低さは銀行の利益には直接つながらないのである。銀行預金の金利が低いのは、日銀が景気を回復させる手段として金融緩和(市場の金利を低下させることなど)を行なっているからである。これにより銀行の貸出金利が低下すれば、企業の金利負担が軽減されて、倒産が減少するほか、借入による設備投資なども期待出来る、というわけである。

 銀行の預金金利を高めれば、家計の金利所得が増加して消費が増える、という可能性もあるが、逆効果になる可能性の方が高い。預貯金を多額に保有する富裕層は「預金の金利収入が増えたから消費を増やそう」などとは考えないからである。むしろ、金利高で中小企業の倒産が増加し、生き残った企業も設備投資を抑制し、景気が悪化して、サラリーマンの手取りが減り、消費が減る効果の方が大きいであろう。したがって、景気を早期に回復させるという事が現在日本に求められる重要な国際貢献である事を考えれば、低金利はやむを得ないと言わざるを得ない。

 国際協調という観点から今ひとつ忘れてはならないのは、各国当局の間で「金融緩和政策を採用してリーマン・ショック後の金融市場混乱と不況に立ち向かう」という合意がなされているという事である。そうした時に、日本だけが金利を引き上げれば、各国の当局から批判されることになろう。加えて、金融市場では、投機家が国際協調の乱れを突いてくるかもしれない。たとえば株価やドルが大きく売られることになれば、せっかく落ち着きを取り戻した金融市場が再度混乱しかねない。日本がそうした引き金を引くことは許されることではない。

 インフレの時に金利がゼロであれば、預貯金が目減りするとの問題も生じるであろうが、現在はデフレであり、銀行預金に金利が付かなくても、オカネの価値が時とともに高まっていくのであるから、預金者が国際協調政策の犠牲になっていると考える必要は無いであろう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム