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2010-03-19 07:40

“生方粛正”で「小沢降ろし」の抗争激化へ

杉浦 正章  政治評論家
 さすがに読売新聞の記者出身だけあって、喧嘩の仕方を心得ている。皮を斬らせて、肉を斬った。今後は幹事長・小沢一郎の骨を断つ動きとなって、民主党内で展開するだろう。副幹事長・生方幸男が筆頭副幹事長・高嶋良充とやり合った「小沢降ろし」第一ラウンドは、生方のKO勝ちだ。副幹事長辞任要求は、まるで独裁政党の“粛正”のように映るからだ。生方の動きは、うっ積した「小沢おろし」のマグマの噴出を意味しており、閣僚からも支持する声が上がり始めた。これは、明らかに民主党内抗争の始まりを意味しており、今後参院選挙前の「小沢辞任」問題をめぐって、食うか食われるかの攻防が展開することになろう。

 反小沢の動きは、思わぬところから噴出した。獅子身中とも言うべき幹事長室の内紛である。生方と言っても、それほど知られていない副幹事長だが、反小沢の動きとしては、小沢一極集中を排除するための政策調査会設置を求めるグループの中核的存在だ。既に41人の国会議員を集めて、反小沢の橋頭堡としている。高嶋との第一ラウンドは、高嶋が生方の「今の民主党は権限と財源をどなたか1人が握っている」とのインタビュー発言をとらえて、辞任を迫ったことに端を発する。生方の喧嘩のうまさは、ニュース・キャスターの経験もあるだけあって、メディアの反応をにらんで焦点を言論の自由の問題に絞ったことだ。「党内に言論の自由はないのですか」という切り返しは、筆頭副幹事長レベルでは受け止められるものではない。加えて、とどめの一発は「秘書が3人逮捕されている幹事長の責任はどうなる」で勝負があった。

 問題は、鳩山と小沢の反応だ。鳩山は「言論封じだとか、封じでないとかいう話とは、レベルが違う」と院政・小沢の擁護に回ったが、これも例によって見当外れだ。高嶋は一副幹事長の発言を問題視して、辞任を迫ったのだから、“言論封殺”そのものではないか。鳩山は、メディアに向かっての発言を非難したが、メディアを散々利用して首相になった男の発言とも思えない。小沢を批判する者を辞任に追い込み、他の議員への見せしめにする露骨な抑圧政治に他ならない。小沢と高嶋の電話のやりとりも、猿芝居の域に属する。形の上では「円満に」という小沢を、高嶋が説得した形にしているが、これだけの人事を筆頭副幹事長の独断で出来るはずがない。小沢の意を体して、謀りにはかった対応に違いない。高嶋は小沢の代理の前哨戦をやって、政治的にも対マスコミ・アピールでも敗退したことを意味する。

 大体このような政治手法は、小沢が院政を敷き始めて一貫してとってきた独裁的対応であり、生方更迭の報を聞いて筆者は、スターリンの“粛正”がすぐ脳裏に浮かんだ。多くの国民も同様の印象を受けたであろう。非小沢の財務副大臣・野田佳彦が「闊達にものを言う文化を持っていたのは、民主党の魅力。耳に痛い話をしたから辞表を迫られるのは、極めてよくない」と擁護に回った。生方更迭は床にばらまかれたガソリンに火をつけたような形で、今後広がりを持つ要素を秘めている。行政刷新相・枝野幸男も擁護した。普天間問題で鳩山政権が抱える“5月危機”を増幅させる新たな要素が登場したのだ。当面政策調査会設置の会合が来週開かれるのを皮切りに、さまざまな動きが生ずるだろう。攻める側に“更迭反対”の“大義”を渡してしまった小沢政治のほころびが、必ず広がると見る。
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