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2010-04-02 17:07

(連載)日本は、米中の狭間でぐらぐらするな(2)

河東哲夫  自由業
 だがそれでも、米国が「東アジアにおける中国との力比べ」を意識し始めたことは事実なのだろう。そしてこのことは、日本にとって、次のことを意味する。 

 (1)これまで中国では、その国際関係専門家の多くが「日米安保は東アジアの現状・安定維持に役立つアジアの共有財産である」との考え方に同意してきたが、米中が軍事面での鞘当てを強めるにつれ、日米離間をはかってくる可能性がある。特に自衛隊と米第7艦隊の提携に対して、中国は厳しい目を向けてくるであろう。他方、米側は日本に対し、米軍との共同行動の強化を求めてくるだろう。つまり日本の国民は、米国との連携か、中国への従属か、どちらかの選択を迫られる時期が来るだろうということである。中立という手もあるが、これは日本が米中双方からむしり取られるだけの結果に終わろう。

 (2)中国は、日本の尖閣列島への潜在的要求を抱えている。日米関係が危うくなれば、この要求を表面化させるだろう。そして沖縄にも中国の関心は及ぶだろう。「それでもいい」という日本人もいるだろうが、中国にそんなことをされて、もつ政権はない。日本社会の自由と民主主義を守るためにも、そして日本の安全を守るためにも、日米安保体制の堅持がもっともましな政策だろう。

 (3)日本が日米安保堅持の選択を行ったとしても、それは中国との敵対関係を意味するものではない。米国自身、中国と緊密な経済関係を続けるであろうし、日本企業も日米安保の後ろ盾があって初めて、中国政府による恣意的な接収、課税強化などの危険を恐れずに、中国で活動ができるだろう。現実的思考に長ける中国も、日米による「軍事ではバランスと抑止、政治・経済では協力」という使い分けのルールが、自国の利益にも合致することを直ちに納得するであろう。
 
 (4)日本人は、米軍が日本に基地を有して広く行動することに、被害者あるいは迷惑意識だけを持ちがちであるが、東アジアにおける米軍のプレゼンスが、米国の国益だけのためではなく、東アジアの現状と安定の維持、そして他ならぬ日本の安全と繁栄維持のために不可欠な役割を果たしていることを、もっと理解する必要がある。中国海軍が増強するにつれ、尖閣列島ばかりでなく、究極的には沖縄さえも潜在的脅威にさらされるようになるのであり、これは外交だけでは防げない。米国が一国で世界の警察官の役割を果たすことに伴うマイナスの面も確かにあるが、国連はこれに代わることはできない。ドルに代わる国際通貨が目下見当たらないのと同様、軍事面においても米軍がもっともましな存在なのである。そして日本は、自分の何を守りたいのか、どのように守っていくのか、そのためには米国、中国との関係をどのように動かしていきたいのかを、主体的に考え、それに沿って各国との関係を運営していくべきである。(おわり)
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