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2010-04-12 00:55

(連載)「核なき世界」と日本の対中外交(2)

角田 勝彦  団体役員
 このNPRは、核テロ対策や核不拡散を米核戦略の最優先課題に掲げた。また「核の役割を縮小する」というオバマの方針に沿って、非核保有国でNPTを順守する国家に対しては「核攻撃しない」と宣言する「消極的安全保障」を厳格に適用する方針を打ち出した。4月6日の記者会見でゲーツ国防長官は、この方針を敷衍して、北朝鮮、イランを名指しし、NPTを順守せず、核兵器開発を続けた場合、核攻撃の対象となり得ると説明している。さらに、このNPRは、米国が核弾頭を削減し、新たな弾頭の開発はしないこと、核実験は行わず、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を目指すことなども示している。
 
 「核兵器のない平和で安全な世界」実現のための次のステップも決まっている。即ち4月12・13日にはワシントンで核安全保障サミットが開催され、中国、インド、ロシアなどの核保有国をはじめ、鳩山首相を含む計47カ国の首脳が集まって、国際テロ組織の手に核兵器が渡ることがないよう、世界各国の核物質の防護体制を4年以内に確立する方法を話し合う。また、5月3日にニューヨークで始まる5年に1度の核不拡散条約(NPT)再検討会議では、核拡散の歯止めとなる合意文書の採択を目指す予定である。

 こういった実績を前に、プラハ演説をオバマの幻想と酷評したような論評は数少なくなっている。フランス外務省は「熱烈に歓迎」し、「この成功」がNPT再検討会議に「前向きのシグナルを送る」と述べ、核軍縮前進への期待感を表明した。鳩山首相も「核弾頭数を削減するのは世界にとって大変な朗報で、大いに歓迎すべきことだ。日本は被爆国だから、核のない世界をつくるため、先頭を切って走っていきたい」と述べた。核安全保障サミットでは、茨城県東海村に、外国人の核管理の技術者を受け入れて養成する核テロ阻止と核不拡散強化の国際拠点を作ること、核物質の製造元を追跡、確認できる「核鑑識システム」を日本を中心につくることなどを含む具体的提案を行う予定と報じられる。
 
 ただし、理想主義的核全廃論者の失望感表明は別として、いわゆる現実論者からも批判が行われている。即ち、米ロ新条約の核弾頭、運搬手段の数え方や定義には両国の利害が反映され、実効性は乏しいとの批判とともに、とくに米国側で、従来の抑止力(「拡大抑止力」つまり同盟国への核の傘を含む)は維持されるのかとの懸念が表明されている。(つづく)
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