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2010-05-17 09:48

中国軍もついに「トランスフォーメーション」か

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 4月に行われた中国海軍による過去最大規模とも言われる大規模な遠洋訓練は、日米関係の悪化を背景として、中国海軍が、日本列島~琉球列島~台湾~フィリピンを結ぶ「第1列島線」をめぐる攻防に参戦する意思を明確にしたものである。我が国では、中国海軍の大規模艦隊が沖縄本島と宮古島の間を通過したこと、艦隊が沖ノ鳥島近海に居座ったこと、その過程において中国海軍のヘリが海自護衛艦に急接近するという威嚇行為に出たことが、大きく取り上げられた。もちろん、これだけでも、中国海軍が遠洋での作戦能力を向上させる意思を持っていることが明瞭に看取でき「重大な脅威である」と断ずるに十分な材料であるが、事態は、予想を上回るものである可能性がある。

 米国の保守系シンクタンクの一つであるヘリテージ財団のチェン研究員は、同研究所のウェブサイトに5月3日付で、今回の中国海軍による大規模演習に関する論説を掲載し、「注目すべき点は、中国海軍の行動範囲の拡大もさることながら、北海、東海、南海の3艦隊から兵力が結集されて演習が実施されたことである」と指摘している。これがなぜ特筆すべきことなのか。

 チェン氏によれば、従来、中国軍の艦隊は、それぞれ割り当てられた軍区内で行動するものであり、軍区を越えた行動がなされることは稀であった。しかし、今回の大規模演習は、軍区を越えた行動に他ならず、中国軍は、中央集権化が進み、より近代化されたということになる。さらに、チェン氏は、今回の大規模演習は、海空による共同演習であったことを示唆している。そうだとすれば、これは中国軍の統合作戦能力の向上を意味している。すなわち、4月の中国海軍の大規模演習は、中国軍の「トランスフォーメーション」が、かなりの速さで進みつつあることを示していると理解すべきである。

 我が国では、中国海軍の大規模演習は、早くも忘れ去られつつあるように見受けられる。しかし、上述の通り、今回の演習は予想以上に深刻な意味を持つ可能性が高い。それゆえ、改めて警告を発したいと思う。そして、このように中国軍の「トランスフォーメーション」が進捗している状況下で、普天間移設問題などをめぐって日米間に隙間風が吹いていることが如何に危険なことであるか、言うまでもないことであろう。
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