国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-09-09 12:53

(連載)中国の北極海進出とわが国の対応(1)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 中国の海洋進出といえば、南シナ海や西太平洋での活動が最も活発であり、我が国への直接的影響も最も大きいが、中国は北極海にも強引に進出しようとしている。その目的は、北極海の海底に豊富に存在する資源の獲得である。北極海の海底に埋蔵する原油や天然ガスは世界全体の埋蔵量の4分の1に達するとの試算がある。さらに、金・銀・銅・鉄・亜鉛・スズ・ニッケル・ダイヤモンドなどの鉱物資源も豊富であるとされる。中国は、これらの資源を数十年の長期的なタイム・スパンで捉え、経済成長を支える戦略的に重要な資源と位置付けている。中国海軍の尹卓・少将は「中国が北極海開発の一角を占めるのは当然」と言い切っている。
 
 中国の北極海進出の具体的な動きとして、8月31日に中国の北極科学調査チームが北極圏における約40日間にわたる調査を終えた、と新華社通信が報じている。同チームは、アラスカ沖のボーフォート海やベーリング海などの130か所以上で海氷データを収集し、生態系を調査した。そして、同時に資源探査も行なったようである。

 北極海では、豊富な資源を平和的かつ円滑に開発すべく、沿岸国がルール作りを進めようとしている最中である。その目的のために、米・露・カナダ・デンマーク・フィンランド・アイスランド・ノルウェー・スウェーデンの8カ国は、北極評議会を構成している。これに、英・仏・独・ポーランド・スペイン・オランダの7カ国がオブザーバとして加わっている。中国は韓国・イタリアとともにオブザーバ参加を申請していたが、2009年4月にノルウェーのトロムソで開かれた北極評議会の閣僚会議で、却下されている。そこで、科学調査という形で「実力行使」に出たというわけである。

 中国の行為は、直ちに国際法に違反するというわけではないが、北極海の資源の秩序ある開発に向けたルール作りをしているところに、いわば土足で割り込むようなものである。沿岸国の中では、ロシアが200海里を越えた大陸棚を主張して、海洋探査を進めるなど、最も攻撃的な姿勢をとって、他の国々の警戒感を招いている。中国の北極海進出は、ロシアとの摩擦を引き起こす可能性があり、ことによると、ロシアは沿岸国の既得権益を守る側に回り、他の沿岸国に対する態度を軟化させるかもしれない。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム