国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-09-21 07:38

自民石原伸晃は、小粒な口舌の徒か

杉浦 正章  政治評論家
 首相・菅直人が内閣発足後最初に投げた変化球が、景気対策のための2010年度補正予算案の与野党事前調整だ。「野党の希望も入れた形で補正予算案を組めば、国会審議も順調にゆく」というのだ。補正にせよ、本予算案にせよ、まず政府案を作るのが政権与党最大の責務であるが、あえてこれを放棄してでも、野党と事前調整しようというのだから、画期的だ。これが成功すれば、秋の臨時国会のみならず、通常国会に向けても、前例を作ることになり、展望が開ける。しかし、ことはそう簡単ではない。自民党の財源案には「子ども手当執行停止」のトゲがあるのだ。

 菅の発言に対して、自民党幹事長・石原伸晃は当初「抱きつかれてもいい」と柔軟姿勢を示していたが、内閣発足直後から急に方向を転換した。「一体首相は、自民党の補正予算案を読んでのことか、単なる思いつきか」と言いだしたのである。自民党案は、総額5兆円規模で、財源には2009年度決算剰余金、独立行政法人資産売却、建設国債発行に加えて、子ども手当の執行停止7000億円が含まれているのだ。石原は「子ども手当のように、経済波及効果の生じないものは、削って財源にすべきだ」と主張しているのだ。

 この石原の主張は、民主党にとってはきつい。なぜなら、子ども手当はマニフェストの1丁目1番地であり、小沢一郎が満額実施を主張しており、代表選でも修正路線の菅とし烈な対立点となっている。これを削減すれば、党内抗争の火種を探している小沢グループに、格好の標的を与えることになるからだ。石原の強硬姿勢の背景には、野党が臨時国会で補正予算や「政治とカネ」で強行方針をとり続ければ、やがて民主党内の亀裂を拡大して、解散・総選挙に持ち込めるという判断がある。この結果、菅の変化球はなかなか通用しない状況ともいえる。自民党は国民生活よりも、政局意識に傾斜した対応であろう。

 しかし、隘路がないわけではない。公明党幹部が菅提案に前向きな姿勢を示しているのだ。公明党の補正予算案は4兆円だが、自民党案に比べると、財源にトゲを含んでいない。公明党案の財源は、予備費9000億円、剰余金1.6兆円、建設国債1.5兆円であり、極めて常識的な線を維持している。民主党にしてみれば、何も自民党とだけ組むだけが国会対策ではない。おまけに、かって公明党は子ども手当法案に賛成している。したがって公明党案をかなり取り入れれば、逆に自民党を孤立に追いやることもできるのだ。法案早期成立のための議員数も、公明と組めば十分足りる。将来の民・公連立政権への布石にもなり得る。

 自民党は「早期補正予算成立が景気の2番底回避に不可避」としているが、既に実施に移されてしまっている子ども手当の撤回にこだわって、社会的混乱を起こし、補正の実施を遅らせて何になるのだろうか。野党になって1年、かっての「何でも反対」の社会党化を目指しているようにも見える。「政治とカネ」など対峙(たいじ)すべきところは対峙すべきだが、政権政党に復帰したいのなら、まず国民生活第1主義でいくべきだ。石原は、予想以上に口舌の徒で、小粒なのかも知れないと思い始めた。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム