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2010-09-21 16:52

日米安保条約改定50周年記念円卓会議を振り返って

高山 雅司  (財)ディフェンスリサーチセンター研究委員
 去る5月24日に日本国際フォーラムの主催で東京にて開催された「日米安保条約改定50周年記念円卓会議」にオブザーバーの1人として出席した者ですが、このたび、その『報告書』(http://www.jfir.or.jp/j/exchanges/pdf/100623houkokusyo.pdf )を一読する機会を得ましたので、私なりにその議論を振り返って、感想を申し述べてみたいと思います。

 結論をいえば、今回の「円卓会議」は、日米両国を代表する有識者が一堂に会した会議として、誠に有意義であったと思います。ただ、パネリストの ひとり(孫崎亨氏)が「中国の大国化は必然であり、そうなれば軍事力も米国並みとなるので、米中間で相互確証破壊戦略が成立するだろう。そうなれば、中国の核に対して日本の核の傘はなくなるので、日本としては、米国の支援を期待できなくなる。その場合、日本としては中国との間に経済力の密接な関係をつくることによって抑止力をつくっていく必要がある」(『報告書』20頁)と述べているのには、疑念と懸念を覚えました。

 そこで、フォーラム終了後、孫崎氏に「冷戦中、米国の核の傘は有効でなかったのか」と訊ねると、孫崎氏は「そうだ」と答え、私は「それはおかしい。ソ連の核について相互確証破壊戦略が成立していたからこそ、米の核の傘は信頼でき、冷戦に勝利した」と応酬しました。キッシンジャー氏等が「核の傘は信頼できないといっている」と孫崎氏は主張し、物別れに終わりました。現在、米国国防省は核態勢報告等により同盟国に対する核抑止力(核の傘)を保障していますが、孫崎氏によれば、「信頼できない」そうです。米国の核の傘は目に見えませんが、私はその効果を期待し、信頼しています。鳩山前首相の外交顧問であった孫崎亨氏は、普天間問題をめぐるあの迷走でどんな助言をしたのでしょうか。このような方が、つい最近まで防衛大学校教授であったと知り、さらに驚きました。

 とはいえ、この点を除けば、日米双方のパネリストともに、私としては共感を覚える議論を展開された方が多かったことも事実です。各セッションを通じて、中国の台頭と米国の退潮傾向を懸念し、「今こそ日米関係の強化が必要である」との議論が、今回の「円卓会議」の基調となったことに安心いたしました。 私は、今後の日本にとって、仮に「中国か、米国か」の選択を迫られることになれば、明白に米国を選択するべきであると考えております。その点、今の民主党政権の 国家基本政策、特に安全保障政策については、一方ならぬ危惧を覚えます。いずれにせよ、今回の「円卓会議」は大変有意義な会議であったことは間違いなく、 またこのような機会があれば、是非出席させていただきたいと願っています。
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