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2010-09-25 13:37

(連載)尖閣諸島問題について日本は反論せよ(2)

坂本 正弘  日本戦略研究フォーラム副理事長
 靖国問題の教訓は、中国による日本国内の分断を防止し、国内世論の一致を確保することの重要性である。すでに、観光業界が影響を受け、今後財界からも苦情が出るかもしれないが、ここでの妥協は更なる干渉を生む。尖閣問題では、過去の自民党政権の対応も大きく影響しているところから、この際、外交は超党派で対応するとの原則を樹立してもらいたい。さらに言えば、今回の事件は「中国の台頭」という厳しい挑戦の表れであり、外交の背後に軍事力のあることの表面化である。新しい安保懇が先ほど勧告を出した空海軍の増強、西南方面の防衛重視、集団的自衛権の樹立などの、国防の充実策が、外交のためにも重要となることを認識する契機となることを期待したい。
 
 中国の国際的ポジションは決して優位のみではない。中国の高姿勢の背景には、高まる資源欲求、国力・軍事力の向上を背景とする領土拡大主義、大衆ナショナリズムに答える共産党政権の硬直性などの絡み合ったものが感じられる。中国には「総合国力が脆弱だと戦略的国境は地理的国境の内部に入り込み、総合国力が強勢だと、戦略的国境は地理的国境を越えて拡大する」という戦略思想があるが、最近の中国の黄海、南シナ海での行動は、今回の尖閣での中国の行動と類似しており、この戦略思想を実行しているものである。今回の日本の対応を、韓国、アセアンをはじめとするアジア諸国は、期待と危惧を持って注目している。

 また、米中関係は今年に入り、変化し、米国では「米中もし戦わば」という報告書すら出る状況である。中国には、米中関係が悪化すると日本に接近し、日中関係がぶつかると対米接近に転ずる傾向があるが、今回は、自ら中断した米中の軍の協議を復活させる提案をしている。鳩山政権時代日本は対米外交で苦いコストを払い、菅政権はいまその修復過程にある。対中政策は日米同盟の重要な柱であるが、米国は上記の経緯から、尖閣列島が日米安保条約第5条の適用範囲に入ることを明言する義務があると考える。クリントン長官は前原大臣との会談でそのような趣旨の発言をした。

 今回の事件は、日本を取り巻く安全保障環境が激変しつつあることを感じさせる。それは、これまでの友愛的外交や小切手ばらまき外交や、米国依存外交では対応できないものである。日本は、改めて「自分の国は自分で守る」との基本姿勢を打ち出すとともに、米国やアジア諸国に働き掛け、地域の平和と安定を確保する道を進むべきである。いずれにせよ、今回の事件は、日本にとって、今後のより大きな外交安全保障の試練への対応の試金石だと考えるべきである。(おわり)
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