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2010-09-28 03:54

戦略を欠いた対応の積み重ねが、最悪の展開につながったのでは?

小笠原高雪  山梨学院大学教授
 このたびの尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件については、事実関係のはっきりしない点も多いが、これまでの報道や発表を見る限り、日本側の対処に稚拙な点があったことは否定できないように思われる。日本側は当初から法律問題として取り扱ったが、そうなれば中国側が強く反応してくることは自明であったといえるだろう。もちろん、中国船を退去させるだけで終えるべきであったといえるかどうかは、容易に判断しにくい問題である。しかし、一旦は船長の逮捕に踏み切りながら、結局は唐突に釈放したのが、最悪の展開であったことは、異論の少ないところであろう。

 どうして日本側はそのような対応をしたのであろうか。これを合理的に解釈するのは難しい。強いて想像を逞しくするならば、今回の事件をきっかけとして公式のルートと別個のルートを作ろうとする動きが中国側に存在し、そのことによって日本の国内政治がマニュピレイトされる事態を避けるために、当局者が不利を承知で敢えて先手を打った、という可能性を考えられないことはない。しかしそれは全くの想像であるに過ぎない。戦略を欠いた対応の積み重ねが、最悪の展開につながったと考えるのが、少なくとも現時点では自然であると思われる。

 いずれにせよ、今後の日本にとって何よりも重要なことは、不当な既成事実づくりを辛抱強く阻み続けることであろう。中国側にいかなる国内事情があるにせよ、日本側の抵抗の意思が不十分である場合、中国側はそれを利用するに違いない。一連の事態のなかで唯一の救いは、米国が尖閣を日米安保の対象と明言したことである。少なくとも予見しうる将来、米国が西太平洋の制海権を中国に譲渡することはないであろう。日本としてはそうした展望のもとに、沖縄基地問題を解決しつつ、南西方面における防衛力の整備に取り組まなくてはならない。
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