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2010-10-04 09:55

(連載)中国周辺諸国との連携を強化せよ(2)

平林 博  日本国際フォーラム副理事長・日印協会理事長
 インドは、1962年に中国解放軍の侵入を受け、押し戻したものの、カシミールの一部を中国に占拠されており、また東北のアルナチャル・プラデシュ州のヒマラヤ国境では国境が確定できていない。最近中国は、アジア開発銀行がアルナチャル・プラデシュ州で行おうとしたプロジェクトに異議を唱えた。マンモハン・シン首相が自国の一州である同州を訪問しようとした際には、訪問の取りやめを要求した。勿論、インド政府は一蹴して、シン首相は訪問した。核を保有するインドは、中国との経済的互恵関係を重視するが、中国の無理難題には一切譲歩しないこととしている。ちなみに、中国は、友邦パキスタンのアラビア海沿岸、国際的異端児ミャンマーのベンガル湾沿岸に加え、スリランカにも港を建設しつつあり、ネパールのマオイスト政党を応援することと併せて、四方からインドを締め上げる「真珠の首飾り」戦略を推進している。
 
 東南アジア諸国は、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、インドネシアと、すべての南シナ海沿岸国が中国の領土・領海要求にさらされている。中国は、南沙諸島のみならず、自国から遠い西沙諸島の領有権、さらにはインドネシア海域にまで領海を主張している。中には、中国の艦船と海上で銃火を交えた国もある。ベトナムは、歴史的に中国王朝の侵略を受けたのみならず、1979年にも共産中国から侵略を受けて、押し返した国である。最近、ベトナム政府は、最初の原子力発電所を、潜水艦の供与を条件にロシアに発注したが、これも対中国牽制である。

 これら諸国は、日中のやり取りを固唾を飲んで見守っていたが、日本政府は「屈服」したと受け止め、落胆しているものの、今後の対応についてはわが国との連携強化を望んでいる。中国は太平洋の西半分を押さえ、さらにはインド洋にまで進出する海洋戦略を進め、空母の建造など、着々と手を打っている。しかし、中国人も実利を重んじる国民である。中国共産党政府は、弱みを見せると増長するが、毅然とした相手には一目を置く。国際社会が反発し、特に中国周辺の自由と民主主義を重んずる東アジア、東南アジア、南アジア、中央アジアの各国と日本が連携し、これに米国や豪州・ニュージーランドが協力する場合には、中国も一定の自制を働かせるであろう。

 要は、まずは日本政府や国民が自国の領土・領海を守る堅い意思を示し、次いで国際的にわが国の主張を強く発信し、味方につける外交力を発揮できるかどうかである。鳩山、菅と続く民主党政権は、普天間問題と尖閣問題で失態を犯したが、今こそ教訓を学んで、外交を立て直してもらいたい。(おわり)
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