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2006-07-21 09:37

イラク派遣の自衛隊は米軍支援ではなく、イラクの復興と安定化のために活動せよ

吉川 潤一   学生
 イラクのサマワに派遣されていた陸上自衛隊が撤収を開始しました。陸上自衛隊撤収後は、クウェートに拠点を置く航空自衛隊が、イラク南部に展開する多国籍軍への人員輸送と物資補給を続けるとともに、イラク中部と北部で活動する国連機関への人員・物資輸送を開始する予定ですが、この航空自衛隊の活動は、中東地域での日本の評判を貶めるだけでなく、イラク復興支援特措法にも違反するので、私は反対です。

 第一に、日本政府は米国政府の期待に応えるべきであり、そのためには、より安全な空輸活動を拡大することで、米国が主導するイラク復興への関与を示すべきであるという意見も聞かれますが、ブッシュ大統領が、米軍によるイラク攻撃の大前提である大量破壊兵器がなかったことを認めた以上、国連安保理決議1483号に基づく米軍主導の軍事活動は、世界の平和と安定への貢献という正当性を失っています。日本政府は、正当性を失った有志連合軍に自衛隊を参加させてはなりません。

 第二に、航空自衛隊の活動は、長年に渡り、日本の官財学界が、パレスチナへの支援や中東地域での経済活動によって築き上げてきた中東地域での日本のイメージを失墜させる危険性があります。なぜなら、航空自衛隊が行っている兵員輸送と物資補給は、米国が主導する有志連合国の軍事行動に直接関与することを意味するからです。中東の人々の大半は、米国が「イラクの復興と民主化」を進めているのではなく、アラブ国家を「侵略」し、「占領」していると見なしており、「経済大国」「平和の国」「広島と長崎に原爆を落とされた犠牲者」という日本のイメージが、「『イスラエルの最大の支援者でアラブ諸国への侵略者』である米国の協賛者」というイメージに変わる可能性は極めて高いです。また、輸送中の多国籍軍の兵員あるいは補給物資が攻撃され、自衛隊が自衛行為としてイラク人を殺害すれば、日本は米国と同一視されるでしょう。

 第三に、米軍の死者は「戦争終結宣言」後も増え続ける一方、イラク人の死者は民間人だけで最低37,000人と推定されており、イラクが未だ戦争状態にあることは明白です。航空自衛隊の活動範囲を、比較的治安の良いイラク南部地域だけではなく、米軍が展開し、毎日のように戦闘が起こっているバクダッドとその周辺や北部のアルビルまで拡大すれば、それが国連支援のためであっても、「戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域に自衛隊の活動を限定するイラク復興支援特措法への違反です。

 よって、日本政府は、航空自衛隊による有志連合軍への兵員輸送と物資補給を停止し、バグダッドとアルビルで活動する国連機関への輸送支援計画も中止すべきです。そして、航空自衛隊の活動範囲を治安の安定した南部地域のみとし、さらに、その活動を当該地域で活躍する現地NGO、国際NGO、国連機関への医薬品、食料、資材、機械等の輸送に限定すべきです。その上で、多国籍軍の活動と戦闘の範囲を示した「戦闘地域マップ」を作成・公表し、そのマップに従って、航空自衛隊の活動地域を拡大あるいは縮小し、もし多国籍軍の活動範囲と戦闘範囲が航空自衛隊の活動地域まで拡大した場合は、イラク復興支援特措法に基づき、航空自衛隊を避難あるいは撤退させなければなりません。また、航空自衛隊の活動が、米軍主導の有志連合軍への後方支援ではないことと、イラク復興支援特措法にも違反していないことを国民に知らせるため、防衛庁は、航空自衛隊の輸送品目とその輸送先を公表すべきです。以上の条件を満たして行われる航空自衛隊の活動ならば、「日米同盟のための復興支援」としてではなく、イラクの平和と繁栄を目指した支援として世界からも評価されると私は考えます。
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