国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-11-30 18:36

危機における野党自民党のあり方はこれでよいのか?

水口 章  敬愛大学国際学部准教授
 先の米国の中間選挙で共和党が歴史的勝利をおさめた際、『フィナンシャル・タイムズ』紙は「これは共和党の勝利というよりも、民主党に対する批判であり、下院議会で過半数を取った共和党の責任は重い」との論調を掲載した。同様のことが日本の参議院選挙後の政界でもいえるのではないだろうか。まして、長きにわたり政権を担ってきた自民党は、米国の共和党以上に、重い責任を負っているのではないだろうか。

 しかし、残念なことに、この党の国会での質疑や同党の重鎮と言われる議員の発言を聞いていると、批判専門党、粗探し党になってしまった感がある。国会での危機管理に関する一連の質疑を見ていると、1年ほど前まで与党であった経験を国民のために活かそうとしていないように見える。ハーバード大学のサンデル教授が主張する「共同体における構成員の責任」という問題を真剣に考えたこともないのではないかとさえ思う。参議院予算委員会での質問でも、政府批判に終始していた。この時の質問者たちは、副大臣や政務官経験者であり、現在の朝鮮半島情勢に鑑みれば、こうした政府批判に時間を使うことは、リスクマネジメント上障害となることは、十分理解しているはずの人々である。

 それだけでなく、与党であった当時には、こうした事態の改善に努めてきたはずの人々である。質問では、例えば「朝鮮半島有事において海上警察権の行使の法整備はどうなっているのか」、「海上自衛隊の領域警備に関する自衛隊法の改正はどうなっているのか」などと火急的速やかに取り組むべき法整備問題について尋ねるべきではないだろうか。さらに一歩進んで、自民党が自ら改善案や具体的対応策などを示しながら、政府とともに危機対応に取り組むべきだろう。それが、長らく与党であった責任といえるのではないだろうか。

 一方、民主党政権も、韓国の李政権が軍事的警戒強化だけでなく、安保経済点検会議を開催し、情勢不安からくる金融市場、株式市場などへの悪影響対策を検討、実施したような幅広い危機管理への意識は、残念ながら低いと言える。果たして、日本の国会議員の中に、北東アジア地域の危機にあって、党派を超えて、韓国や、中国、米国の政治リーダーたちと連絡を取り合い、協働して難局を切り抜けようと動いている人が、何人いるだろうか。現在の国会の有り様を、次世代を担う若者たち、子どもたちはどう見ているだろうか。彼らが「自分もあの人のような政治家になろう」と思えるような、高い意識と行動力を見せてほしいものである。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム