国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-12-03 07:33

改造しても政権浮揚はないだろう

杉浦 正章  政治評論家
 内閣改造説が永田町を徘徊している。官房長官・仙谷由人と国交相・馬淵澄夫への問責決議対策が改造の理由だ。首相・菅直人が決断するかどうかが焦点となっている。支持率が危険水域に入っている状態を、菅としては何としても脱して、政権の末期症状から離脱したいところだろう。しかし断言しておくが、改造しても政権は浮揚しない。民主党政権自体の欺瞞(ぎまん)性と、事に当たっての稚拙さが問われているからだ。改造はやっても、当面糊塗の小細工に過ぎない。民主党幹事長・岡田克也も、参院議員会長・輿石東も口をそろえるように、12月2日「改造は首相の判断」と述べている。両者とも否定しないのは、「あり得る」と見ているからだ。なぜなら、表向き菅が「罷免せず」を言っても、結局代えざるを得ないという判断が常識だからだ。

 いくら問責決議に法的拘束力がないと言っても、過去の3例はすべて降板につながっており、野党が通常国会冒頭から仙谷・馬淵を見逃すとは思えない。現に自民党総裁・谷垣禎一も更迭がない場合には通常国会冒頭から審議拒否に出ることを明言、これに公明党も同調しそうな流れだからだ。冒頭から審議拒否となれば、内閣は追い詰められて、揚げ句の果ては解散か、首相辞任か、という事態も想定される。自民党内各派から2日、通常国会冒頭での解散説が一斉に出回ったのも、そういう判断がある。元首相・麻生太郎が「ある日突然、ということが十分にあり得る」と述べれば、元幹事長・伊吹文明も「解散があるとすれば、2月だろう」と語ったという。追い詰められた菅が、政権の自殺行為である解散を回避するには、問責閣僚の罷免か、改造で、当面を糊塗するしかないのである。

 仙谷の場合、属人的な問題も大きい。若い記者らは内閣の主柱であるように錯覚をしているが、逆だ。内閣最大のブレーキとなっているのだ。というのも、スポークスマンとしての発言が問題をことごとく増幅させてしまっているからだ。官房長官は本来政権の守りの主軸である。追及されれば問題を出来るだけ矮小化させて、打ち消すのが役目なのに、火に油を注ぐような発言を繰り返す。当然野党の集中砲火を浴びることになり、菅にとってはひいきの引き倒しになる。通常国会は仙谷官房長官1人いれば、野党は事足りるのだ。攻撃対象に困らず、政権をとことん追い込める。したがって菅にとっては、仙谷官房長官で通常国会を乗りきることは不可能に近い。

 しかし改造は、政権に隙を生じさせるケースが多い。小沢一郎が虎視眈々と狙っているのも、改造の動きだ。田中真紀子が「内閣を大改造すべきだ。小沢元代表ほど政界での経験が豊富な人はおらず、有効に活用すべきだ。それができないなら総辞職だろう」と、小沢の意向を反映したようなドスの利いた脅しをかけている。小沢が沈む泥舟に乗るかどうかは別として、改造となれば小沢の処遇が問題となり、小沢を入閣させれば、現在20%台の危険水域にある支持率が、竹下内閣の記録4.4%にまで落ち込みかねない。またささやかれているように、仙谷と幹事長・岡田克也を入れかえても辛気くさいだけで、急に人気が沸くこともないだろう。前原誠司を官房長官に横滑りさせても、仙谷ほどではないが、舌禍が心配だ。いずれにせよ菅は追い込まれた。進むも地獄、引くも地獄の情況である。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム