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2006-07-24 16:23

大戦略を欠く日本の対ロ外交

大原 敬  高校教師
 7月19日付けの木村汎先生の「JFIRコラム」記事「現ロシアについての3つの誤解」を興味深く読ませてもらいました。木村先生は、日本人のロシア観には、下記の3つの神話があり、いずれも誤りだ、と喝破しておられます。

(1) 神話(その1):ロシアは安定している。
(2) 神話(その2):シベリア開発には中国の協力が必要である。
(3) 神話(その3):日本はにロシアのエネルギーが必要である。

 第一に、ロシアは安定していない。プーチン政権となってから、たとえば汚職や腐敗の横行は今までになくひどい。第二次チェチェン戦争は何時終焉するのか、まったく予想できない。テロや殺人は、横行している。

 第二に、シベリアの問題は「人口の減少」でなく「人口の過剰」にある。これを解決できるのは、新しい就職口をつくりだす企業の誘致であり、それを実現できるのは、中国ではなく、日本だ。

 第三に、シベリアには、パイプラインを敷くに値するほど十分な量の石油は埋蔵されていない。加えて、日本は少子化傾向にあり、現在以上のエネルギーを必要としなくなる。

 誠に目の覚めるような思いです。日本の対ロ外交は、とくに森、小泉時代になってから、まったくの右往左往で、なんの大戦略もなく、ただ無様な敗走を続けています。それは「敵を知らず、己を知らない」外交だからです。昨年5月のブッシュ大統領のリガ演説、今年5月のチェニー副大統領のビリニュス演説と、米国はロシア批判ののろしを上げています。そんなときに小泉首相はのこのことモスクワまで出かけていって、第二次大戦戦勝記念式典に末席で拝礼しているのです。ソ連の対日戦争に関するかぎり、日本が謝罪する理由などないでしょう。むしろヤルタのスターリン主義として、日本は謝罪を要求する立場ではないのですか。それを弁えないから、攻めの北方領土交渉ができないのです。

 ロシアの実態を知らず、世界の対ロ観の流れに無知で、対ロ外交の大戦略を構築することなどはできない。そしてわが国の対ロ外交とは、北方領土の返還実現しかないでしょう。そこにピントが合っていないから、3つの神話を盲信したり、米国の発するシグナルが聞こえてこないのです。
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