国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-02-09 20:08

(連載)少子高齢化と日本の未来 (2)

角田 勝彦   団体役員
 ただし人類は種として成熟してきたようで、1960年代後半のような急速な伸び(年率平均2.04%)は見せていない。2050年には、世界総人口は91億5000万人、うちインドが人口16億1380万人で、14億1700万人の中国を抜いて世界最大となり、日本は1億170万人で17番目に落ち込む見通しである。超長期予測では22世紀の終わり頃、人類は100億人程度で安定する(宇宙開発の可能性があれば、それは別)とみられている。

 問題は人口変動の速度である。1960年の30億から1999年の60億への40年間での倍増は、1972年のローマクラブの報告書『成長の限界』を生んだが、その予測はほぼ否定された。国連食糧農業機関(FAO)は「2050年に90億人を突破する世界人口を養うためには、食料生産量を今より70%増やす必要がある」と主張しているが、飢餓人口(2009年に過去最悪の10億2000万人)は、主として生産でなく、政府の施策と援助の問題なのである。なお、2008年世界総人口一人あたりの名目GDPは9012ドルに達しており、中の上レベルといえる(マレーシア8197ドル ブラジル8311ドル)、過不足分は施策と援助で調整できる。

 さて日本の人口減の問題である。21世紀末には約4800万人にまで減るとの予測はともかく、2050年1億170万人との予測は、対策を必要としよう。これを補うための移住者導入は、量的に2000万人という途方もない数字を意味するほか、経済的・社会的に低賃金労働者(搾取)や2級市民の発生などの社会コストの増大に結びつき、妥当な解決策に成り得ない。人的資源として現在活用されていない女性・中高齢者や無職の若年層の活用が、第1の対策であろう。これと平行して研究すべきは、各種ロボットの活用である。自動車にも匹敵する有効需要を生むのも夢ではない。

 第3の道は、人口増のためあえて無理をしないことである。GDPが同じなら人口減により一人あたりGDPは自然に増大する。住居などの資産も、子どもが少ないなら、一人あたりより多く相続される。社会的には国民の都市居住が増加しよう。人口減は、日本だけの現象ではない。たとえばEU(2010年、27カ国の総人口約5億110万人)は、日本と同様に急速な人口高齢化に直面しており、2035年をピークに減少傾向に入るとみられる。生産に偏しない新たな生存様式を、世界にさきがけて提示するのも、日本の一つの生き方ではないだろうか。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム