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2011-02-19 01:42

在沖米軍は、やはり抑止力だ

平林 博  団体役員
 吉田重信氏は、2月17日の本欄への投稿で、「抑止力は方便であった」と言った鳩山元首相について、「正直きわまる発言をする首相が日本にいたことを、国民は喜ぶべきである」とし、「米軍の抑止力を維持するうえで、沖縄基地は、不可欠ではない」と断じた。2点とも誤りだ。

 鳩山前首相が「正直きわまる」かどうかは疑義があるが、一歩譲っても、正直なだけのリーダーに国を託すことは危険だ。今回、それが証明された。他方、沖縄の米空軍と海兵隊の存在は、わが国にとって大きな抑止力だ。仮に米国本土とハワイのみの安全保障に限れば、吉田氏の言うように、沖縄の米軍及びその基地は不可欠ではないかもしれない。しかし、わが国の安全保障にとっては、必須不可欠である。海兵隊は、一旦有事の場合には空軍の援護を得ながら真っ先に前線に立ち、敵陣に切り込むことを任務とする。従って、敵国ないし潜在敵国のできるだけ近くに配備されてこそ、最大限の能力を発揮する。わが国を取り巻く戦略環境を考えれば、その存在意義は自明のことである。

 日米安全保障条約上、日本が攻撃された際には米軍が参戦することになっているが、わが国が攻撃された場合でも米国や米軍自体が攻撃されるまでの間、米国が直ちに反撃に加わるかどうかは、100%確かなわけではない。わが国の各所に米軍基地があるからこそ、米国は、わが国への攻撃を米国への攻撃とみなすのである。特に、前線基地として能力的にも象徴的にも重要な沖縄が攻撃されれば、米国は直ちに反撃するであろう。米軍基地及びその周辺には、兵士のみならず家族、軍属も沢山居住している。愛する家族が危機に陥ると思えば、米国政府も、将兵も、真剣になって日本を守ろうとするであろう。

 かつて冷戦時代に、ワルシャワ条約機構(WTO)軍と接する西独に駐在する米軍兵士と基地は、西独が維持する一種の「人質」であり、米国の参戦を促すトリップ・ワイヤー(導火線)であると考えられていた。この際、そのことを想起すべきである。米軍基地にはこのような抑止力があって、沖縄を守ってくれている。だからこそ、沖縄県民のかなりの部分も、米軍の駐留をやむを得ない存在と考えてくれているのである。
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