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2011-03-07 10:39

(連載)吉田重信氏の米帝国弾劾論を排す(1)

角田 勝彦  団体役員
 吉田重信氏の2月25~26日付け投稿「米帝国の不可避的衰退と日本の持つ4つの選択肢」を拝見した。同氏は、要するに、日本は、従来型の「日米同盟唯一絶対論」などでなく、「抗争」と「協調」の二面性をもつ米中関係を前提にして、アジア太平洋情勢の安定化に資する「平和構想」の構築を目指ざすべきであり、「沖縄基地抑止論」などは「うそ八百の方便」である、と主張されていると解する。

 後者と同趣旨の吉田氏の2月17日付けの投稿「『抑止力は方便』との鳩山元首相発言の真実」に対しては、2月19日付け本欄で平林博氏が「在沖米軍は、やはり抑止力だ」と反論を寄せているので、吉田氏からは再反論の説明が欲しいところであるが、それはさておき、「4つの選択肢」及びその前提とされている「米帝国の不可避的衰退」については異論があるので、以下に拙論を簡単に申し述べたい。

 現代史を振り返ると、主権国家併存のウェストファリア体制のなか19世紀半ば頃から続いたパクス・ブリタニカは、ドイツ帝国の挑戦(第一次大戦)により終了し、「国際連盟と多極協調」の体制(米国は国際連盟を唱道すれど、加盟せず)に引き継がれた。その後、日独伊枢軸諸国による同体制への挑戦(第2次大戦)があったが、米国を含む連合国により退けられた。第二次大戦後は「国際連合と多極協調」の体制の建設が図られたが、西欧の没落とイデオロギーを異にする東西の対立は、米ソ2極体制下の「冷戦」を引き起こし、独立した多くの旧植民地など(中国を含む)は、米ソの間にある「第3世界」を誇称した。

 1989年のソ連・東欧圏崩壊後、米国は唯一の超大国となった。1991年ブッシュ(父)大統領は「新世界秩序」構想を呼びかけ、1992年フランシス・フクヤマは「歴史の終わり」を謳歌したが、1993年のソマリアにおけるPKOの失敗以降、国連の役割が後退し、米国の構想は崩れた。2001年の9.11テロ、2008年のリーマン・ショック及び近年の中国など新興国の勃興は、多くの論者をしていまや「多極化」や「無極化」の時代の到来さえ示唆させるに至った。国家以外のアクター(ITで結びついた大衆を含む)も力を増している。中国の台頭はあるが、とてもG2とは呼べない。米国は政治・経済・軍事(及び多分社会・文化)の面で他国からかけ離れた実力を持っており、現在は「1超多強」の世界と呼ぶのが妥当であろう。(つづく)
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