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2011-03-14 11:14

在日米軍基地問題を国家の安全保障問題として直視せよ

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 米国務省のメア日本部長が、昨年末に国務省で行なった米国の大学生を対象にした講義の中で、「沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人」という趣旨の発言をしていたと報じられたことを受けて、更迭された。3月9日に来日したキャンベル国務次官補は、その日のうちに記者団に対して日本側への陳謝を表明し、10日には外務省を訪れて、松本外相に謝罪した。また、ルース駐日米大使は、沖縄を自ら訪れて県民に陳謝している。メア発言のソースは、聴講していた学生のノートだけであり、昨年末の講義での発言がキャンベル国務次官補の来日に合わせるかのように報道されたのは、釈然としないものが残らないでもないが、一連の米国の対応は、実に迅速であり、危機管理の見本であると評価できる。これ以上追及を続けて両国関係を損ねるような愚は犯してはならない。余談ながら、日本の民主党政権は、メア発言が報じられた当初は「問題視せず」としていたにも関わらず、いつの間にか謝罪要求に転じるという、いかにもちぐはぐな対応であった。

 確かに、報じられているメア氏の講義での発言を読むと、外交官の発言としては粗削りで、いささか不穏当とも言える表現も見られる。しかし、メア氏の沖縄関連発言は、奇しくも、米軍基地を巡る沖縄と日本本土のいびつな関係を、改めて浮き彫りにしてくれた。その意味では、示唆的であったとも言える。メア氏は、問題とされた講義の中で、「日本政府は沖縄の知事に対して、もしもお金がほしいなら(普天間の辺野古移設合意に)サインしろ、と言う必要がある」「日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする。沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人である」と発言したと、報じられている。沖縄の米軍基地問題は、当然安全保障の問題だが、我が国では、沖縄による米軍基地負担とそれに報いる経済振興策のリンク、という側面が余りにも強すぎる。メア氏の目に、これが極めて奇異なことであるとと映ったとしても不思議ではない。

 米軍基地問題が混乱するのは、これが安全保障問題として正しく位置づけられていないことが、最大の原因である。米軍基地問題は安全保障問題なのだから、最終的には中央政府が責任を持たなければならない。すなわち、沖縄であれ、他の地域であれ、必要ならば地元の合意がなくても、最終手段として国の責任において措置をとることができるよう法整備をしておくべきなのである。もちろん、決してこれは地元の合意が不要であるとか、地元の意見を聞く必要がないなどという意味ではないが、地元に最終決定権を与えてしまっていることが、「ゆすりの論理」と受け取られかねない行動の土壌になっていることも否定できないのではないかと思う。

 我が国においては、在日米軍基地の安全保障上の意味について、正面から語ることが余りにも少なすぎた。しかし、最近の中国の東シナ海での活動活発化は、沖縄の戦略的重要性を明確に高めている。今こそ、在沖米軍基地と経済振興策とを峻別するべき時である。メア発言は、日米関係にとって不幸なものであったが、そのような適切な方向に転換するきっかけにできれば、日米関係と日本の安全保障にとってプラスに転ずることができ、是非ともそうすべきである。
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