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2011-03-16 07:37

与野党「党首会議」を設置し、迅速な危機対策を打ち出せ

杉浦 正章  政治評論家
 この未曾有の大災害に、当然ではあるが、与野党の妥協が成立する方向となった。民主党が子ども手当と高速道路無料化を削減の方向で譲歩。来年度予算関連法案、とりわけ国債発行の特例公債法案にも成立のめどが立ってきた。この際与野党は、東北関東大震災復興・原発事故克服に絞って「与野党党首会議」を設置し、首相・菅直人を補佐し、知見・ノウハウを分かち合い、国難克服に向けて全勢力を傾注すべきだ。とりわけ福島原発事故への対応と情報開示を促進するとともに、復興支援策を早期に打ち出し、世界的に動揺している市場の沈静化を図ることが急務だ。

 民主党が、マニフェスト固執から急転換した。幹事長・岡田克也が3月15日の与野党幹事長会談で、大震災復興財源確保で目玉政策の子ども手当や高速道路無料化に向けた予算を一部削減する考えを表明したのだ。初めて予算修正で折れたことになる。自民党はこれに加えて、農家の戸別補償、高校無償化も加えた4K政策の凍結を主張、調整の余地を残した。しかし、この際自民党は4Kにこだわるべきではない。問題はスピードである。東京株式市場では株価が暴落、全世界に波及する流れとなっている。投機筋は虎視眈々と「日本売り」に狙いをつけており、ここは一刻も早く巨額な復興策を具体的な数字で提示して、市場の沈静化を図るべきだ。自民党は4Kを2Kで妥協すべきだ。本予算の修正で財源を確保するか、大型補正で対応するか、で意見が割れているが、対応策などで対処を遅らせてはならない。本予算修正と補正の両方を早期に実施すべきだ。

 財源・市場対策で様々な案が出ている。自民党総裁・谷垣禎一は15日、平成22年度と23年度の予備費を活用し、5兆円規模の緊急対策を速やかに講じることを主張すると共に、平成23年度予算案とその関連法案については、速やかに審議を再開して、結論を出すことを提唱。谷垣は、各党の幹事長・書記局長と政策責任者、それに政府の防災担当大臣を加えた「与野党協議会」を設け、対策を話し合っていくことも提案した。経済財政相・与謝野馨は、株価暴落に関連して、2008年秋のリーマン・ショック後に浮上した政府による株式の買い取り構想に言及し、「当時は50兆円規模で株式を買い上げる構想があった。そのような方法もある」と述べ、検討を進める考えを示した。既に与野党は15日、「各党・政府震災対策合同会議」の設置を決め、16日に初会合を開くが、こうした具体策を早期に打ち出し、スピード感のある対応をすべきだ。

 加えて、緊急事態である。与野党は最終責任者である「党首会議」を民主・自民・公明を中心に設置して、大筋での合意の上で、予算、補正、復興、原発の施策と対応を打ち出すべきだ。はっきり言って、首相・菅直人の危機管理能力は不十分だ。これを補う体制が不可欠となりつつある。もう政治は過去の恩讐にこだわっていられるときではない。原発事故にしても、ネットを見れば、危険な風評が出回っており、いったん火が付くと、関東大震災の風評被害を上回る展開が危ぶまれる。ソ連の最大の失政であるチェルノブイリのケースばかりが独り歩きしている。2ちゃんねるなどでは、全く健康に影響のない放射能レベルの横浜の主婦が「子供と乳母車で散歩したが、放射能汚染は大丈夫か」と聞けば、明らかに素人が適当な答えをするという状況が生じている。これは一にかかって、政府と東電の責任である。

 この際政府は、既に出来ているはずの原発事故に関する各種シミュレーションを公表すべきである。軽微なものから本当に深刻なものまで開示しておけば、展開の予想が出来て、混乱は生じにくい。ここまでくると情報隠蔽の方が危険な集団心理状況とこれに伴う行動を招くことを知るべきだ。加えて、ホテルでも、旅館でも、民家でも良い、避難者の避難先を国が先頭に立って早急に手配せよ。現地はまだ冬が続いている。また全国の拠点における放射能レベルを定時に公表し続けよ。人心安心の要となる。こうした重要事項は、与野党党首が共同責任で決定し、打ち出せばよい。それにつけても全国紙のセンセーショナルな見出しはどうか。いたずらに恐怖心をあおっている傾向が強い。もう少し落ち着いた見出しをつけよ。
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