国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-03-30 10:12

蓮舫氏のサマータイム導入発言は「思いつき発言」

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 東日本巨大地震による太平洋沿岸の原発や火発への甚大な被害により、東京電力管内で計画停電が実施されているのは、ご承知の通りである。これに関して、先日、蓮舫行政刷新相(節電啓発担当相兼務)が、「計画停電対象地域の夏場の電力不足に備えるためサマータイムの導入を検討する」という考えを表明したが、全く賛成できない。

 蓮舫氏は、東京電力管内の夏場の電力需要に関して「今の3000万キロ・ワットという値ではない。去年の実績は7月で5000万、6000万キロ・ワットだ」と指摘しているが、サマータイム導入による節電の効果は未知数である。おそらく、不足を補うことができるほどの効果はないであろう。焼け石に水程度の効果であっても、非常事態なのだから実施すべきだという考えもあるだろうが、大震災により混乱している時期に、混乱に拍車をかけるようなサマータイム導入など、首をかしげざるを得ない。サマータイムを導入するとなれば、あらゆるコンピューター・電子機器等の調整を要する国家的事業となるが、こんなことは震災復興の妨げになるおそれがあり、大震災からの復興と同時にやるべきではない。コンピューターの「2000年問題」の時も、国を挙げて取り組んで、大過なく乗り切ることができたが、あれは十分な準備期間をもって行ったものである。
 
 そもそも、平時であってもサマータイム導入には疑問がある。サマータイムによって長くなる日没前の明るい時間を有効活用すれば、電灯を消すことにより省エネになるというが、一体いつの時代の議論を引きずっているのか。活動できる時間が増えたならば、その分だけ電気を使った活動をして、節電に逆行する可能性さえある。また、日本は比較的緯度の低い地域にあり、東西にも南北にも長くのびている。こういう地理的条件下でサマータイムを導入すれば、北東側と南西側の両端にどうしてもしわ寄せが来ることになる。特に、南西側では日の出が遅くなりすぎる。例えば、8月ごろの、鹿児島の日の出は5時40分前後、日の入りは19時前後だが、サマータイムが導入されれば日の出が6時40分前後、日の入りが20時前後となる。さらに、時計の針を前後させることにより、体内時計の不調が多発し、これが意外と大きな社会的損失となるという指摘もある。ちょうど1年前のことになるが、去年の3月26日付の英紙フィナンシャル・タイムスが「いい加減にサマータイムに振り回されるのは止めるべき時期だ」という趣旨の社説を掲載していた。

 少なくとも、サマータイムの導入は、種々の得失が十分に議論され、国民的合意がなされた後に行うべきものである。蓮舫氏のサマータイム導入発言は、民主党政権の悪弊である「思いつき発言」がまた出たとしか言いようがない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム