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2011-03-31 17:55

「省エネ的な中世」への逆戻りはむしろ歓迎すべきかも

吉田 重信  文明論専攻
 「『原子力ルネッサンス』を『暗黒の中世』へ逆転させてはならない」と題する3月30日付けの杉浦正章氏の本欄への投稿は、原発推進論の「原子力ルネッサンス」が、今次の福島原発事故による反原発推進論の台頭により「暗黒の中世」に逆戻りすることがあってはならない、との趣旨の所論であると理解したが、この主張には「中世」理解に関する最新の研究成果が反映されておらず、その観点から筆者としてつぎのようなコメントをしたい。

 「暗黒中世」論は、かっての西洋史家による一般な評価であったが、最近の西洋史学界においては、中世社会は必ずしも暗黒でなく、新しい思想の進展がみられるなどによって、むしろ「ルネッサンス」の到来を準備したとみる「中世見直し」論が盛んになっている。

 たとえば、キリスト教神学においては、エックハルトが説いたような「異端神学」が現れ、また本来禁欲的な修道院活動でさえ、新しい医療や農業方法の発見、発展に寄与したと評価されている。他方、西欧史学の方法論を踏襲した日本史論でも、かつては鎌倉時代以降の日本の「中世」を暗黒視する考えが一般的であった。しかし、近年では、西洋中世史と同じく、日本の中世も近世を準備したとして、「中世見直し」論が表れている。

 筆者の観点では、西欧と日本の中世社会は、キリスト教や仏教の影響を受けて、禁欲・節約志向の、今の言葉でいえば「省エネ」社会であったと考える。したがって、今回の原発事故を踏まえて考えるとき、今後の日本の国つくりにおいては、このような「省エネ」的な中世への逆戻りの動きは、必ずしも「歴史の退行」ではなく、むしろ「ポスト原発」時代にふさわしい、新しいパラダイムを示唆しているのではないかと考えたい。
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