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2006-08-30 10:19

次の段階に対して、今から準備を

埜口興平  大学院生
 北朝鮮のミサイル発射から2ヶ月が経とうとしている。日本政府はこの間、安保理への制裁決議案提出を皮切りに、万景峰号の入港禁止やG8サミットにおける非難声明採択のとりつけなど様々な手を打ってきている。しかし、北朝鮮はさらに核実験という次のカードを行使する気配がある。こうした状況の下、どのような対処をするべきかの愚見を述べたい。

 その前にまず、一部議論の中で「北のミサイル発射は軍事演習の一環で、それ自体が咎められるべきではない」といったものがある。これには大いに反論を呈したい。軍事演習は確かに各国が独自に判断し、適宜行いうるものだ。しかし、今回北朝鮮が行ったような闇雲なものは我々の言うところの“演習”ではなく、ある種の“暴発”である。なぜなら、彼らのミサイル発射は国連民間航空条約(シカゴ条約:北朝鮮も批准)やSOLAS条約に抵触しており、国際水路機関や国際海事機関への事前通告もなかった。演習であるならば他の国の意表をつく必要などなく、堂々と国際社会に通告してから行えばいい。彼らが危険な国家であることの認識は揺るがせにすべきでない。

 しかし、だからと言って日本は北朝鮮と国交を断絶し、外交努力を放棄せよと言っているのではない。あくまでも6カ国協議や日朝間での根気強い交渉を続けるべきであり、彼らをして「恫喝ではなく対話こそが我らの生きる道である」と思わせるための方策を今は考えるべきである。例えば、実質的にはもはや白紙である平壌宣言も取引材料としてはまだ使えよう。自らの出方次第で同宣言の効・無効が決まる余地があると北朝鮮に思わせることも一つの手段だ。

 また、先日の制裁決議は強制力をもった憲章7章が含まれていなかったが、北朝鮮が核実験という強硬手段をとった場合、日本は今度こそ7章の文言を決議に盛り込むよう働きかけ、その日本の意思が支持されるように、今からトップレベル会談やロビー活動を通じて各国との関係を構築する努力が必要であろう。

 さらに私は、多くの疑問や否定的意見が集まる経済制裁に関しても積極的な立場である。ただし、北朝鮮はイランやベネズエラ、イエメン、ミャンマー等と弾道ミサイル市場におけるネットワークを築いているだけでなく、偽タバコ、偽ドル、覚醒剤の密輸による収入源をも持っている。それゆえ、日本単独で資金を凍結してもそれほどの効果は期待できないかもしれない。一方で、国内の北朝鮮犯罪ネットワークの摘発を契機に始まった米国の経済制裁は平壌の幹部に流れる金を堰き止め、結果的に北朝鮮を追い詰めているのもまた事実だ。したがって、日本もこうしたnon-traditional security分野(密輸・人身売買・資金洗浄等)で各国と連携することで北朝鮮に圧力をかけられるのではないか。経済大国・日本が、経済的な攻勢をかける段において、その効果が薄いというのでは、国家の威信にかかわる。効果あるものにすべく、懐疑論者も否定論者もあらゆる知恵を全力で集めるべきだ。
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