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2011-06-02 07:38

民主政権、断末魔の“遠心分離”状態

杉浦 正章  政治評論家
 発足より2年、衆院305議席の巨竜がのたうち回っている。内閣不信任案が可決されようと否決されようと、もはや民主党政権は断末魔と言っても良い状況に陥っている。首相・菅直人が解散に打って出ても、投票できない被災地切り捨ての「破れかぶれ選挙」として、致命的な大敗を被るに違いない。2代続いた無能きわまりない首相、破廉恥なる政策転向、「政治とカネ」の醜態は、民主党に“自業自得”の遠心分離効果だけをもたらし、再結集は不可能な段階に入った。菅はまさに進むも地獄、退くも地獄の様相だ。民主党は、元代表と、前代表が結束して現代表に反旗を翻すという、醜態である。党首討論に立った自民党総裁・谷垣禎一が「足元は液状化でぐちゃぐちゃ」と形容したが、液状化に加えて、地割れがあちこちに生じて、手の付けられない状況に陥った。もともと自民党系から旧社会党左派に至るまでの、いわば水と油の集団が、政権という甘い蜜につられて結集しただけの政党であり、結党の理念などは後講釈にすぎなかったのだ。6月2日午後1時の不信任本会議は、その手の付けられない状況を自ら露呈するものとなるだろう。

 小沢系議員の6月1日の決起集会に71人が出席、代理出席6人を含めれば77人が名を連ねたことは、まさに不信任案可決に必要な82議席に向けて、猛追の状況にあることを物語っている。勢いは小沢サイドにあるが、勝敗に関わりなくこの勢いは続き、「菅降ろし」が実現するまでやまないだろう。可決された場合、菅は衆院解散で切り返すとしているが、これほど常識のない首相は戦後見当たらない。なぜなら、被災地では10数万人が県内外に避難している状況にあり、入場券の送付などとても不可能とされているからだ。それにもかかわらず政府は5月17日の閣議で、衆院が解散された場合、「東日本大震災の被災地であっても選挙の延期は認められない」としたうえに「憲法に内閣の解散決定を制約する規定はない」とする答弁書を決定した。これは被災地の現実無視の三百代言的な見解だ。一番投票権を行使したいのは被災者であろう。これを無視した選挙を自分の保身のためにだけ断行できるとでもいうのだろうか。

 もっとも、解散すれば、総選挙は民主党の分裂選挙となり、政党支持率からいっても、内閣支持率からいっても、同党の大敗は避けられまい。筆者の分析では、100議席そこそこの議席が確保出来れば良いほうだという状況だ。総選挙後は、自民、公明両党を軸とする政権となる流れが一番濃厚であろう。まさに自民党にとって思うつぼの解散であり、菅は「破れかぶれ解散」で政党リーダーとしては最後の大失策を犯すことになる。一方、総辞職した場合は、民主党“非菅勢力”と自公の連立が実現する公算が濃厚だ。谷垣が、菅に「あなたが辞めれば、与野党が党派を超えて国難に対処できる態勢はいくらでもできる」と述べたが、自公軸で小沢系が参加する連立は可能だ。その場合、かって小沢が述べたように「憲政の常道として谷垣首相」となるかどうかが焦点だろう。菅退陣の場合、民主党が「丸く収まって代表選挙」という流れがないとは言えないが、この亀裂から見て極めて難しいだろう。

 不信任案が否決された場合には、当面菅が居座ることになるが、党分裂の可能性がある。先に指摘したが、66議席以上が造反・離党すれば、民主党は過半数割れとなり、衆参で過半数のない政権が長続きできる可能性は少ない。加えて、参院が問責決議案を提出すれば、小沢勢力の同調もあって、可決は確実視される。不信任案を否決して、分裂しないケースもあり得るが、党内抗争はますます激化し、野党は問責を提出し、それこそ政権は液状化著しいものとなる。したがって、いずれにしても菅は「死に体」となるのであり、辞めなければ“野垂れ死に”が待っていることになる。政治家として有終の美を飾りたいのなら、早期退陣しかあり得ない。谷垣が「かつて竹下さんが『汗は自分でかきましょう。手柄は他人にあげましょう』と言ったが、あなたは『汗は他人がかきましょう手柄は自分で取りましょう』だ」と指摘した通り、ここまで来た全ての根源は、その菅の政治手法にある。
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