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2011-06-10 07:26

“おんぼろ幹部”が「野田新品みこし」を担ぐ裏

杉浦 正章  政治評論家
 「ポスト菅」は、“本命”の財務相・野田佳彦が太ってはいるが、「やせ馬の先走り」になるかならないかの勝負だ。朝日のスクープだが、担ぐ連中が悪い。おんぼろみこしではなく、せっかくの“新品みこし”なのだが、菅を担いできた“おんぼろ幹部”が、主導権狙いで担ごうとしていることが問題なのだ。さっそく政界の耳目は、小沢一郎の反応に集中しているが、「小沢さんちの一郎君、近頃少し変よ。どうしたのかなぁ」という状態。「なれるかなれないかは別問題だが、なれれば立派にこなせる」と、野田擁立の動きに、新政界風見鶏の渡部恒三が微妙な言い回しをしている。確かに問題は「なれるかなれないか」である。なぜならこれまで菅を担いできた代表代行・仙谷由人、幹事長・岡田克也、官房長官・枝野幸男が、ポスト狙いで先手必勝とばかりに政局をリードしようとしている姿がありありだからだ。

 とりわけ岡田は、「不信任の変」で菅のお先棒を担いだA級戦犯。参院議長・西岡武夫が「政権の中枢に関わった皆さん方が、次をどうするんだなどと言う資格は、まったくない。あり得ないことだ」と怒るわけだ。さすがに野田本人も「まずい」と直観したか、嬉しそうな顔をするどころか、こわばった。「今は、菅内閣の一員として、財務大臣としての職責を全うしたい。それ以上でも、以下でもない」と言うのが精一杯。最初に名前が出ることの危険性は十分知っているようだ。案の定小沢グループから「野田氏は財務省の組織内候補だ」という声が上がった。小沢グループにしてみれば、野田本人よりも、まず宿敵仙谷や岡田が担ぐのが気にくわないのだ。加えて「野田即消費税増税」となるのも不満だ。小沢グループは、マニフェスト堅持、消費税増税反対が結束の主柱であり、野田となれば野党自民党と結託して消費税路線を突っ走る姿が目に浮かぶに違いない。

 もっとも肝心の小沢の反応が鈍い。冒頭述べたように「少し変」なのだ。まず不信任本会議直前の前首相・鳩山由紀夫の“暴走”を止められなかった。せっかく可決に持ち込めそうなところまできて、ルーピーにいいようにやられてしまったのだ。従って投票も、組織割れを防ぐために自由対応を迫られてしまった。加えてこともあろうに、戦犯・岡田による処分のための“事情聴取”に応じてしまった。普通の小沢だったら「私が岡田君の事情聴取をしたい」と言うところだろうが、どうもしおらしすぎる。やはり、勝負所での敗退が影響しているのだろう。小沢の動きは「躁」(そう)と「鬱」(うつ)が交錯して現れるが、いまは鬱の段階に入ったのかも知れない。「ポスト菅」でも、グループには当たり障りのない農水相・鹿野道彦を担ぐ動きがあるが、小沢と同年齢の69歳。小沢に近い筋によると「苦労の違うぼんぼんに首相をさらわれてもなぁ」という不満が内在するという。しかし前原誠司がはっきりしない上に、海江田万里もなぜか人気が沸かない。名前の挙がっている自薦他薦組は泡沫的である。加えて盟友の鳩山グループが、若手の反乱で解体の危機にある。とても「反野田」で、小沢・鳩山両グループが盛り上がる雰囲気にはない。

 岡田ら執行部は、事務次官が1人も訪れなくなったような菅をずるずると本人の希望通りに8月まで留任させては、自分の身が危なくなる、という危機感があるに違いない。「野田」を早期に浮上させたのも、半分は「菅降ろし」の思惑がある。このため次期代表選挙を7月上旬に設定してしまおうという動きがある。一種の党内クーデターだ。いずれにせよ、今後約1か月間の勝負となろうが、「本命野田」が大きく引き離しており、他の候補が追いつけるかどうかは、まだ分からない。それにつけてもTBSはみのもんたのかしましい「こんな時に政争論」をそろそろ黙らせたらどうか。もんたもコメンテーターたちも、菅が早く変われば変わるほど、与野党合意で大震災対策が急進展する構図をまったく理解していない。朝から不愉快になる。視聴率稼ぎもいいかげんにしてもらいたい。 
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