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2011-06-24 19:16

「震災復興・原発対策」至上主義では「破綻国家」になる

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 3月11日の東日本大震災発生とそれに伴う福島第一原発の事故から既に3カ月以上経過した。震災復興と原発事故への対応は、ともに迅速に進んでいるとは到底言い難いが、それでも敢えて、我が国に今必要なことは「震災復興・原発対策」至上主義からの脱却であると、強く主張したい。これは、政策論というよりは、まともな政策論を展開するための前提条件である。もちろん、その真意は「震災復興・原発対策」をおろそかにすべきだということではない。「ありとあらゆるものをヒステリックに震災と原発に結び付けてしまうような風潮を打破しなければならない」という意味である。

 国政の課題が「震災復興と原発対策」の2つだけであろうはずがない。外交・安保、経済、社会保障など、国の存立に関わる課題は山積しているが、「震災と原発」を錦の御旗に、思考停止に陥っていると言わざるを得ない。とりわけ憂慮すべきは、外交・安保政策があまりにも閑却されていることである。安全保障環境が、日本の震災を理由に猶予をあたえてくれるはずなどないことは、言うまでもないことであり、それどころか、我が国の態度は、中国の冒険主義を助長する要因とさえなっている。また、エネルギー政策に関しては、冷静さを欠いた中で、まともな議論ができるはずもない。民主党政権が提唱している「再生可能エネルギーによる発電の増加」や「発電と送電の分離」などは、エネルギー安全保障上の観点から検討に値するものだが、現在のような状況では、冷静な議論ができるとは到底思われない。

 もちろん、昨今の我が国の政治的停滞が、民主党政権の統治能力の欠如や、常軌を逸した政争によるところが大きいというのは、改めて指摘するまでもないことであろう。6月のはじめに、米国の知日派を代表する研究者であるマイケル・オースリン氏は、日本の政治的停滞について「日本は破綻国家か?」と題する論評を発表している。これは、知日派にして親日派である同氏が、日本の政治状況を嘆いたものだが、私は、日本の「震災復興・原発対策」至上主義に対してこそ、「日本は破綻国家か?」という疑問を投げかけたい。

 6月24日には復興基本法が施行され、27日には復興担当大臣が正式に任命されると報じられている。社会的ヒステリーに関しては、すぐにはどうこうできない面があるが、制度的には、復興担当大臣が震災復興の大部分の責任を負い、その分、総理はそれ以外の重要分野に力を入れることができるようになる。菅氏に期待するのは筋違いだが、新首相には、是非とも適切な政策的重点配分をお願いしたい。それができなければ、我が国は「破綻国家」への道をまっしぐらに突き進むことになるといっても過言ではないと思う。
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