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2006-09-08 23:27

核軍縮、核不拡散と国家の意図

堂之脇光朗  日本紛争予防センター理事長
 イランが安保理決議を無視してウラン濃縮を続けている。原子力の平和利用の名目で核兵器開発を意図しているのではないかと懸念されている。濃縮の技術は平和目的であれ、軍事目的であれ基本的に同じであるから、意図が問題である。しかし、意図の有無を検証することは不可能に近い。イラクの例をみても、米国は国際的査察があてにならないとして、自国の国家的技術手段でイラクの意図を検証できたと主張した。後に、誤りであったことを認めざるを得なかった。それ故に、不完全とはいえIAEAの保障措置を受け入れるかどうかが最も重要な判断基準となる。

 原子力平和利用のための米印交渉でも米印両国の意図は何であるかをしっかりと見極めたいところだ。昨年7月の米印共同声明に続き、本年3月にインドは平和利用施設を軍事利用施設とは分離してIAEAの保障措置を受け入れるとの方針を打ち出した。部分的ながらも核不拡散への協力である。これに対し米側は将来インドに供給されることになる核燃料や核技術が結果的に兵器用の核物質の蓄積を助長しないようにと一連の提案を行っている。米議会における法案審議でもインドに兵器用核物質生産モラトリウムとか核実験モラトリウムを求める動きがみられる。

 インド側も負けてはいない。シン首相は8月17日のインド議会での演説でインドは検証可能な兵器用核物質生産カット・オフ条約交渉に賛成であり、核実験停止モラトリウムについても異存はないが、モラトリウムは自発的なものであるから、これを他国が押し付けることには反対すると述べた。1988年のナジブ・ガンジ首相の核兵器廃絶提案もいまだに有効であると述べた。

 両国とも当面の本音の意図はインドによる原子力平和利用のための国際的協力の推進であろうが、インドを事実上の核兵器国として扱うのであるから、不拡散の名のもとでの拡散との側面があることは否定できない。これを前提にした上でのことであろうが、両国とも核軍縮、核不拡散も本音の意図であるかのように主張し合っている。いずれにしても、国家の意図は一つの問題につき単一であるとはかぎらないし、不変でもあり得ない。したがって、両国を含め、世界的に核軍縮、不拡散への意図あるいは意欲が高まる時期が再来する可能性はまだ残されていると考えたいところである。
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