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2011-09-02 10:02

(連載)野田新総理は、米知日派の期待を裏切るな (2)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 もちろん、民主党内でろくに意見がまとまっていない現状を見れば、過度の期待は禁物であると思うが、鳩山氏や菅氏の後に、現実的な安全保障観をもった首相が誕生したとなれば、期待する他ないのである。ただ、逆に言えば、野田新総理は、日米関係を回復・改善する極めて重大な責任を負っているということである。日米関係改善に資することは、普天間問題、集団的自衛権の行使、武器輸出三原則の緩和、防衛力強化など、山のようにあるが、私は、まずは、憲法論議も特別の財源もいらない、TPPから始めてはどうかと思う

 もちろん、これとて難事になることは想像に難くないが、米国は、TPP(環太平洋連携協定)を放置する一方で、ASEAN+6(ASEAN+日本、中国、韓国、インド、豪州、NZ)や日-EU のFTA 交渉を進める日本のやり方に不信感を強めている。しかも、よりによって、ASEAN+6 のFTA 交渉開始は、日中韓が主導した。米国にとっては、東アジア共同体の悪夢を想起させられたことであろう。しかし、TPP は、単に通商問題にとどまらず、クリントン国務長官による7月25日の香港の米商工会議所における演説からも分かる通り、米国のアジア太平洋における経済面でのプレゼンスと対中牽制の最重要手段の一つである。すなわち、極めて国際政治的な意味の強いものである。

 クリントン長官は、アジア太平洋地域が経済的に繁栄するためには、開放性、自由、透明性、公平性の4つの原則に基づくべきであり、米国を含めて、アジア太平洋地域の諸国は、これらの原則に基づく、「ルールに基づいた競争」を行なうべきであると言っている。その究極にあるのが TPP である。これは、中国が進めようとしている、中国を中心とした経済的連携と対比されるべきものである。

 アジア太平洋諸国は、米国を含んだ、自由貿易の精神に立脚した経済統合を通じて繁栄するのと、目先の利益にとらわれて、中国に従属する形で中国との経済的関係を強めるのと、どちらがよいのか選択を迫られていることになる。したがって、TPP 交渉への参加を早急に表明することは、日米関係の改善・強化に役立つ。野田氏は、これまで、TPP を強く支持してきた。是非とも、それを枉げずに、英断を下していただきたいと思う。(おわり)
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