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2011-09-22 19:49

(連載)パレスチナ自治政府の国連加盟問題(1)

水口 章  敬愛大学国際学部教授
 国際社会では、イスラエル及びパレスチナ自治政府間の紛争について「早期に平和的かつ公正な解決がなされることを望む」との声が一般的に聞かれる。9月16日、パレスチナ自治政府のアッバス議長は同月23日に「国連に国家として加盟する」との方針を表明した。これに対し、米国をはじめとする一部の国が、この方針を「最終的解決を予断するような一方的行為」だとして、パレスチナ自治政府に厳しい外交圧力をかけている。特に米国は、パレスチナ自治政府が国連加盟申請を行った場合、国連安保理が国連総会に加盟勧告する手続き審議で「拒否権を行使する」旨を表明するだけでなく、パレスチナ自治政府への経済支援の停止までもほのめかす発言を行っている。

 さて、このパレスチナ自治政府の国連加盟申請をどう考えればよいだろうか。確かに、1993年のオスロ合意の本意は、イスラエル・パレスチナ双方が対話によって「平和と領土の交換」を目指すというものであった。この「対話による問題解決」を推進させるために、アラブ連盟諸国、米・ロ・EU・国連の「カルテット」も、日本も、国際会議や経済協力を通して当事者間の信頼醸成に努めてきた。この観点から、米国のパレスチナへの外交圧力に理解を示す人もいる。

 では、イスラエルが入植活動を継続していることについては、どう捉えるべきだろうか。同国は、国連総会や国際司法裁判所において違法性が指摘されている入植活動を、改めようとしていない。このイスラエルの行為は、「最終的な解決を予断する一方的行為」だといえないだろうか。仮に、そう捉えた場合、イスラエルはパレスチナより先にオスロ合意に違反していることになる。

 また、オスロ合意から約20年間、一方が国家で、もう一方が組織という当事者の間での交渉において、成果が上がっていないことを直視すべきだろう。この間、パレスチナ自治政府は治安組織の能力や統治力をつけてきている。その能力は、国家承認されているイラク政府、アフガニスタン政府、そしてリビアの「国民評議会」に比して見劣りするものではない。したがって、パレスチナ自治政府は国家としてイスラエルと包括的安全保障や持続可能な経済交流の在り方を協議できる可能性が高くなっているといえるのではないか。(つづく)
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