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2011-09-30 21:26

パキスタンと決別するアメリカ

川上 高司  拓殖大学教授
 9月23日マイケル・ムラン統合参謀本部議長は米議会の公聴会で、「ハッカニ・グループはパキスタン情報部(ISI)とつながっている」と発言し、同席していたパネッタ国防長官もそれを認めた。ハッカニ・グループはアフガニスタンの過激派勢力のひとつで、9月14日にカブールのアメリカ大使館を襲撃したといわれている。以前からISIとアフガニスタンのタリバンや武装グループとのつながりは噂されていたが、今回は軍のトップが議会での証言で公にそのつながりを明言したため波紋を呼んでいる。

 この発言を受けてパキスタン側は「その発言の証拠を提示してもらいたい。でなければ、アメリカは同盟国を失う危機にある」と激しく反発し、さらに「ハッカニ・グループをたたくためのアメリカの地上部隊には、パキスタンの地を踏ませない」と宣言して、パキスタンとの関係は険悪の一途を辿っている。

 パキスタンは2001年の9.11テロ以来アメリカの対テロ戦争の最前線で協力してきた同盟国である。アフガニスタンでの戦争では、物資の補給はパキスタン経由の陸路で行われている。パキスタン軍はアメリカに抗議するときは、しばしばこの補給線を止めてアフガン駐留の米軍を危機に陥れてきた。タリバンもこの補給線を狙った攻撃を繰り返してきた。それでもこの補給線を使わざるを得ないため、アメリカはパキスタンに気を遣ってきた。また、タリバンやアルカイダの拠点がパキスタンとアフガンの国境地帯にあるため、情報面でも軍事面でもパキスタンの力を借りないとたたくことができなかった。

 だが、ビン・ラディン殺害後、アメリカはパキスタンに対して手のひらを返したように厳しく冷淡になっている。アルカイダを狙った空爆は徐徐にイエメンへと重点が移動している。補給ルートにしても、ロシアや中央アジア経由のいわゆる北回り線が確立されれば、もはやパキスタンは今のアメリカにとってほとんどメリットがないことになる。唯一の懸念は、核ミサイルが過激派の手に渡ることだが、それを考慮しても、両国はこれまでの甘い関係にはもう戻ることがなさそうである。
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