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2011-10-25 09:46

(連載)日本政府のポスト京都議定書採択の延長について思う(2)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 我が国は、京都議定書の延長を認めることは到底容認できない。京都議定書は先にも指摘した通り、衡平性に著しく欠き、我が国の産業に極めて重い足枷となるからである。したがって、すでに京都議定書の延長を認めない方針は表明済みである。「2015年以降の採択」というのは、すでに9月に豪州とノルウェーが共同提案しており、京都議定書延長への対案だが、しからばポスト京都議定書はどのようなものとするのか、その辺りをもう少し明確にしておく必要はあろう。

 ポスト京都議定書の採択を2015年以降にするというのは、それ自体は、それほど悪い案だとは思わないが、まだ大きな問題が残っている。すなわち、2020年に1990年比で温室効果ガスを25%削減するという、鳩山元首相が国際公約として高らかに謳い上げた国際公約である。仮に2015年に新しい枠組みが採択され、即時発効したとしても、2020年まで5年しかないのである。2020年までにマイナス25%というのは、原発の増設を大前提としている。

 しかし、今や、福島第一原発の事故を理由に、原発を漸減させる方針となっている。新エネルギーを増やすといっても、原発を減らして代わりに火力発電に頼るのであれば、温室効果ガスの排出は増加するか、せいぜい微減であろう。早急に、整合的なエネルギー・環境政策を再構築する必要がある。マイナス25%の目標を墨守せよというつもりは全くないが、温室効果ガス削減のためにも原発への依存減少路線は再考してしかるべきである。

 一方、マイナス25%の目標自体も早急に見直さなければならない。この目標は、「他の主要排出国の意欲的な取り組み」が前提条件となっている。京都議定書延長は、この前提条件に明確に反する。仮に京都議定書が延長されたならば、我が国は脱退すべきである。また、京都議定書延長の動きは、上記前提条件に反しているのだから、それを理由として、マイナス25%の目標を大幅に見直すべきであろう。さらに、ポスト京都議定書の国際的な枠組みからの脱退をも留保して交渉に臨むべきである。(おわり)
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