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2011-10-27 10:48

(連載)中国の程永華駐日大使の講演を聴いて(2)

河村 洋  NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 日本は世界唯一の被爆国である。それを無視して、目先の経済的な利益だけを餌にして日中関係を強化できるだろうか?今回の外交円卓懇談会で、多くの参加者から質問が出た地球温暖化も国際公益の重要課題だが、その脅威はゆっくりと進行する。これに対して核兵器で新たな保有者が現れると、その脅威は急激に進行する。だからこそ、核不拡散に対する中国の政策を「平和的発展」なるものの具体的な試金石として問うているのである。

 第3に、中国のグローバル政策および東アジア政策で、アメリカとの関係が殆ど言及されていなかった。しかし、グローバル・レベルであれ、地域レベルであれ、アメリカを抜きにして日中関係は語れない。私が質問したいと思っていたのは、中国が来年のアメリカ大統領選挙をどう見ているのかである。現在は尖閣列島をめぐる領土紛争は鎮静化し、中国は近海で周辺諸国への挑発行動を自粛しているようだが、これはアメリカの大統領選挙を視野に入れてのことなのだろうか?実際に、ヒラリー・クリントン国務長官は『フォーリン・ポリシー』誌11月号にアジア重視を主張する論文を寄稿している。米中関係は日中関係により大きな影響力を持つようになるであろう。

 第4に、程大使が講演で述べたように中国のメディアも多様化しているようだが、中国において言論統制が全くないと言えるのだろうか?劉曉波氏のノーベル平和賞受賞は世界の注目を浴びた。日本にはウイグル解放活動家のトゥール・ムハメット氏も亡命している。池袋のチャイナ・タウンには法輪功の活動家もいる。諸外国で言われるほど中国の言論統制は厳しくないと言われれば、我々もこの件に関する程大使の発言を信じることができる。

 以上が私の抱いた疑問点であるが、冒頭で述べたほど「厳しい」質問ではなく、「ソフトクリームのように甘い」質問になったかも知れない。何よりも中国は国際社会の公益と大国間のパワー・ゲームのどちらを重視するのかを問いたい。中でも核問題、特にパキスタンとの関係どうなるのかが、中国が「覇を求める」のか「求めない」のかの試金石になると考えている。表面的な友好関係や経済的な利益の追求だけで、日中関係が進展するとは思えない。そもそも、景気は循環するものである。経済成長の高さだけでは、日中関係や東アジア地域協力の切り札にはならない。

 最後に、参加者からの質問に懇切丁寧に応じた程永華大使に敬意を表したい。あれほど丁寧に質問に答えれば、私の他に数名の参加者まで質問の順番が回ってこないのも当然である。多くの問題点はあれ、程永華駐日大使の真摯な態度からは中国が本気で日本との関係を強めたがっていることを印象づけられた。こうした観点から、先の外交円卓懇談会は非常に有意義であったと考えている。(おわり)
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