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2011-11-07 10:16

(連載)自衛隊の南スーダンPKO派遣とPKO5原則(1)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 政府は、20年以上にわたる内戦を経て、今年7月に独立を果たした南スーダンにおける、PKO(国連平和維持活動)への陸上自衛隊施設部隊の派遣を決定し、年明けにも1次隊約200人が現地入りする予定である。自衛隊は、南部のジュバを拠点に、道路整備をはじめとする社会インフラの整備にあたる。南スーダンPKOへの自衛隊派遣は、我が国のPKO5原則の見直し論議にとって重要な論点整理のきっかけとなるよい契機とすべきあるが、残念ながら、どうもそうなりそうにない。

 政府は、南スーダンPKOへの陸自派遣に合わせてPKO5原則の見直しを検討する方針である、と報じられている。PKO5原則は、次の5つである。すなわち、(1)紛争当事者間の停戦合意、(2)紛争当事者の受け入れ合意、(3)中立的立場の厳守、(4)以上のいずれかが満たされなくなった場合は撤収、(5)武器使用は要員の生命防護のための必要最小限に限る。政府は、このうち、武器使用基準を、正当防衛・緊急避難だけではなく、「任務遂行のため」にも拡大することを焦点と位置づけているようである。しかし、PKO5原則の見直しは、もっと根本的なものでなければならない。

 国連安保理は、今年8月に、PKO活動の原則として「中立」に代わって「公平」を掲げる重要な議長声明を採択している。ここでいう「公平」とは、具体的には、市民保護を目的とした武力行使を認めるという意味である。伝統的なPKOの建て前は「中立」であり、それは紛争当事者に平等な立場を与えるということだが、市民に危害を加えるようなアクターをも平等に扱うのは公平性に欠けるので、そうしたアクターには武力行使を含めた懲罰を加えるべきだという理屈である。

 伝統的なPKOは、教科書的に言えば、「紛争当事者間の停戦合意成立後に、当事者の要請や同意を得て、国連が中立的な第三者として平和維持軍(PKF)や停戦監視団を派遣し、当事者間の緩衝材となり、停戦が崩れて紛争が再開することを防ぐ活動」である。その本質は、国連憲章第7章に基づく軍事的強制措置とは異なり、平和を破壊するものへの制裁ではなく、停戦維持や兵力の引き離しなどを、あくまでも中立・非強制の立場から行うというものである。(つづく)
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