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2012-01-14 17:54

自民・谷垣総裁のインドネシア・ベトナム外遊は極めて適切

高峰 康修  日本国際フォーラム客員主任研究員
 自民党の谷垣禎一総裁は、1月8日からベトナムとインドネシアを訪問し、12日に帰国した。これは、谷垣総裁にとって初外遊であった。谷垣氏は、両国訪問で、首脳や国会議長と会談し、経済及び安全保障の両面における連携を確認した。野党外交が政府の外交方針と反し、二元外交の弊害が出るようでは困るが、ベトナム・インドネシア訪問というのは、我が国がアジア太平洋地域においてとるべき、海洋アジア諸国の糾合という外交安保政策にまさに一致し、極めて時宜に適ったものであり、政府の外交を補完するものであると、高く評価されるべきであると思う。

 ベトナムは、周知の通り、今やこの地域における対中強硬論の急先鋒であり、原発輸出やTPP参加交渉をはじめとする経済連携を通じて我が国との紐帯を深めようとしている。一方、インドネシアは、ASEANの盟主を自任する大国であり、海洋進出圧力を強める中国に対抗するためのASEAN統一戦線を形成するキーとなる国である。それゆえ、両国を訪問することは、我が国のアジア太平洋地域における外交安保政策の方向性を明確にしてくれる。したがって、谷垣総裁のベトナム・インドネシア訪問は、国のためにも、自民党の外交政策遂行能力を示す上でも、意義深いものである。

 ところが、今回の外遊には、党内も含めて批判が多いと報じられている。曰く、社会保障と税の一体改革をめぐる与野党協議を軽視するタイミングであった、注目を集めやすい米国や中国を訪問先に選ぶべきであった、等々。前者に関しては、あまりに内向的で政局志向ではないかと指摘したいが、私の指摘は書生論と受け取られるであろうし、異なる土俵の話であるから議論が噛み合わないと思う。しかし、後者に関しては、同じ土俵から反論することができる。一体、外遊というものは、目立つために行うべきものなのか。そんなはずはあるまい。実質が重要に決まっている。

 自民党は野党であるといえども、長年政権を担当してきた政党であるし、次の総選挙で政権を奪還する可能性も決して低くない。そういう党の総裁が、外交安保政策上重要な国を訪問し、人脈をより太くすることは、地味であっても極めて適切な行為である。それを、注目度が低いなどといって批判するのは、ベトナムやインドネシアの戦略的重要性を理解しているようには思えず、外交センスに疑問符がつく。むしろ、自民党は、谷垣総裁の外遊の意義を、積極的に正しくアピールすべきである。
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