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2006-10-01 10:39

国際テロ組織と「ならず者国家」への対処は別

角田勝彦  団体役員
 9・11米国同時多発テロから5年経った。11月の米中間選挙を睨み、民主党に押され気味の共和党はテロ対策強化を争点として人気回復を図っており、特別軍事法廷設置法を含む関連法を成立させつつある。国際テロ組織の危険性への認識は世界中で深まっている。インドネシア、英国、エジプト、インドの例に見られるように、テロの危険が世界に広がった事実がある。日本でも何が起こるか判らない。悪夢である核テロについても、最近米国の専門家アリソン元国防次官補は、2014年までの今後8年間に生じる可能性を「現状では50%以上」と分析した。

 国連総会は、9月にグローバル・テロ対策戦略に関する決議をコンセンスで採択した。いかなる目的もテロ(市民の無差別殺害行為)という手段を正当化しない。イスラム圏でも、罪のない人々の無差別殺害行為はジハード(聖戦)ではないとの認識が高まっている。アラブ諸国も過激派サイトの監視など対策を強化している。

テロリストは、無差別殺害行為により政府側の強硬な対抗措置を誘発し、巻き添えにあう民衆の反政府感情を惹き起こすという戦術すら、とっている。国際テロ対策は、基本的に治安活動である。貧困や社会的差別の是正により、テロを消滅させることはできない。他方、この8月、英国で米国行き旅客機爆破テロ計画が未然に防止されたような国際協力の成果がある。上海協力機構のテロ防止も強権的ながら実績を重ねている。脅威を過大評価し、極端な措置に走る危険は避けつつ、内外で危機管理の不備を整備していく必要がある。

 他方、米国が名付けた「ならず者国家」への対処には、別の考慮が必要である。北朝鮮が行ったように国家によるテロ(秘密工作)は存在し、国際テロ組織に対すると同様厳正な措置が必要であるが、例えば大量破壊兵器の開発と保有を目指すことそれ自体はテロではない。アルカイダと一体化したアフガニスタンのタリバン政権打倒は国際的支持を得たが、イラク戦争には反対も多かった。さらに国家は、テロ組織と違い、失いたくないものを有し、国家理性を持つ。リビアの例にみるように交渉による解決の可能性はある。

 手段が適切であるか否か及び費用対効果も検討しなければならない。9月下旬一部が公表された米情報機関機密報告「国際テロリズムの動向」は、ジハードを掲げるイスラム過激主義の拡散の「誘因」としてイラク戦争を指摘している。スズメバチの巣をたたき落とせば、蜂が暴れるのは容易に予測できることである。燻煙剤やクロロホルムを使用する方が上策であった。米国が期待した中東民主化も、本年初めのパレスチナ選挙でのハマスの勝利に見られるように、成果をあげていない。北朝鮮もイランも正念場が近付いてきている。外交は優柔不断と一般に評判が悪いが、勇ましい議論を別に、短絡的でない処理が必要である。
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