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2012-03-23 07:04

「ポスト谷垣」なら町村か、石破がよい

杉浦 正章  政治評論家
 「ポスト谷垣」がなぜにわかに関心を持たれ始めたかといえば、次期首相候補となり得るからだ。この激動期の日本を牽引する人物が、立候補に意欲を示す町村信孝(67)、安倍晋三(57)、石破茂(55)、石原伸晃(54)、林芳正(51)の戦いとなる可能性があるのだ。あえてその候補を絞れば、人格、識見、切れ味、迫力からいって、町村対石破の戦いになることが好ましいと思う。あとはまだ10年早い。せっかく「話し合い解散」ムードを野田との極秘会談で醸し出したのに、かわいそうなのが自民党総裁・谷垣禎一だ。褒められるかと思えば逆で、総裁選への動きや総裁選前倒し論を加速させてしまった。2月25日の極秘会談以前の谷垣は、元首相・森喜朗に面罵されたり、中堅、若手に2度3度と突き上げられるなど散々だった。おそらく谷垣にとっては、極秘会談は起死回生策であったに違いない。谷垣批判は、自民党支持率の低迷、その優柔不断さなど、総じてリーダーシップの欠如に起因する側面が大きい。よかれと思った「話し合い解散」が、中堅、若手からは「対決回避」とうけとられてしまうのだ。

 もっとも次期首相候補に谷垣の目が消えたわけではない。今国会中の解散に持ち込めば、一挙に展望は開けて来る可能性がある。恐らく選挙結果は民主党惨敗で、議席の取り合いになるが、維新の会に行く議席はせいぜい20前後だろう。あとは自民、公明、みんななどで分け合い、自民党が、過半数は難しいにせよ、第一党になる可能性は大きい。第一党を取り戻した谷垣を「降ろす」ことはあり得ないから、公明などとの連立政権で首班に谷垣が選出される公算はある。従って、「話し合い解散」または今国会中の解散が実現すれば、「谷垣首相」もあり得るのだ。解散が実現できなかった場合は、舞台が暗転する。通常国会終了直後から自民党は「谷垣降ろし」のお家騒動となる。そこで前述の候補だが、まず消去法で分析すると、最初に林が消える。参院議員でも憲法解釈上は不可能ではないが、実態論としては無理だ。宮沢喜一が衆院に鞍替えしたのも、首相候補を嘱望されてのことだ。能力と人格は申し分ないが、山口3区に鞍替えして当選できるかどうかがカギ。例え当選しても、当分ぞうきん掛けを求められる。仲のよい石破との会合で、石破を「信念を共有できる兄貴分」と形容したことで、最終的には石破を推す意思表示をしたともいえる。

 石原はどうも首相の器ではないような気がする。発言が軽すぎる。9.11テロを「歴史の必然」、放射線測定を「市民に線量を計らせないようにしないといけない」、反原発を「集団ヒステリー」と失言を繰り返している。ついには胃ろう患者を「意識が全くない人に管を入れて生かしている。まるでエイリアンだ」と述べたものだ。この調子で首相をやったら、政権は3か月でつぶれる。まだまだ修業が足りない。安倍晋三の最大の欠陥は、首相時代にいくら野党から攻められたからといって、半分ノイローゼになってはいけない。首相ほど強靱(きょうじん)な精神力が求められるポジションはない。その精神力の限界を露呈して、こともあろうに首相の座を投げ出しておいて、「ほとぼりが冷めたからまた復活」では、虫がよすぎる。突然政権を投げ出した無責任さは、生涯つきまとわざるを得まい。町村派の指南役・森喜朗がどう動くかが注目されるところだが、年の順で町村を支持しそうな気がする。

 こうみてくると、日本のリーダーとしてふさわしいのは、町村か、石破か、ということになる。町村は先の総選挙では小選挙区で落選、比例区で当選となったが、そのままだったら総裁候補は無理だっただろう。議員を辞職して補欠選挙で勝った結果、総裁候補となり得たのだ。石破とは12歳の年齢差があり、一種の世代間戦争の様相になり得る。論客としては、町村も、石破も、自民党のトップクラスだ。その発言は、石破が政治状況の掌握に独自性があるのに対して、町村は常識的でバランス重視型だ。切れ味は甲乙つけがたい。問題は2人とも党内の人望がいまいちであることだ。漱石の草枕ではないが「智に働けば角が立つ」ところがあるのだ。しかし、今のところ出馬しそうな5人の候補のなかから首相としてふさわしい人材を判断すれば、町村か、石破か、ということになる。
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