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2012-05-21 18:18

危険運転致死罪を考える

船田 元  元経済企画庁長官
 去る4月13日、京都の繁華街・祇園において、軽乗用車の暴走によって7人の尊い命が奪われるという、悲惨な事故が発生した。事故を起こした車の運転手が死亡しているため、原因の究明には時間がかかるようだが、これまでに判明したことは、運転手は過去において「てんかん」の発作を起こしたことがあり、治療を受けていた病院の医師からは、再三にわたって車の運転を禁止することが述べられていたという。狭い道路を駐車中の車や人を巧みによけていたとの証言もあるため、運転手に意識があった可能性も否定できないが、発作によって運転に何らかの支障が生じた可能性が高いと思われる。

 そこで思い出されるのは、栃木県鹿沼市で1年前に発生したクレーン車が暴走し、集団登校していた小学生6名が犠牲になった事故である。運転手は「てんかん」の持病があることを隠して免許を取得し、運転中に発作を起こして事故を起こしたことが明らかとなっている。その後ご遺族の皆さんはこのケースを「業務上過失致死罪」ではなく、「危険運転致死罪」によって裁いてほしいとの署名活動を展開し、17万人を超える署名が集まり、つい先日法務大臣と国家公安委員長に、要望書を届けたばかりであった。「業務上・・・」とは故意でなく、あくまでも過失によって相手を死亡させた場合に適用され、7年未満の懲役が課される。「危険運転・・・」とは、故意によって相手を死亡させた場合であって、20年以下の懲役が課される。

 ご遺族の感情からしても、20年以下の懲役という厳罰を望むのは当然のことである。ところが「危険運転・・・」の罰を構成する要件が、現在のところ少なくまた曖昧である。飲酒や薬物による事故、スピードの出しすぎによる事故、割り込みや幅寄せなどの無謀運転による事故、そして信号無視による事故が、構成要素となる。判例を重ねるごとに要件が拡大しつつあるが、未だに「てんかん」を隠しての免許取得と運転による事故は、その要件には含まれてこない。そのような議論をしている矢先、今回の京都の事故が発生してしまったのである。とても残念でならない。

 このような問題を判例の積み重ねで解決する方法もあるかもしれないが、これでは時間がかかりすぎる。やはり私たちは法律改正で速やかに解決することを強く望む。ご遺族の皆さまの無念さを一日も速く和らげるためにも、そしてこれ以上同種の事故によって、新たな犠牲が生じないようにするためにも、国会がもっと早く動いてもらうことを強く望む。
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