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2012-06-19 07:00

もはや「消費税阻止」は不可能の現実

杉浦 正章  政治評論家
 どんな理論武装した反対論が出てくるのかと固唾をのんでいたが、結局反対のための反対論しか出てこなかった。民主党内反対派は、国家の盛衰がかかわる税と社会保障の一体改革を低次元の「政局化」しようという意図にしか見えない。反対派の論理は、増税反対の庶民にこびを売り、選挙圧勝の夢よもう一度という“はかなさ”に満ちあふれている。もう反対派は離党して、「年金7万円新党」でもつくってはどうか。そのほうがすっきりする。民主・自民・公明党の3合意は、例え小沢グループなどが全員が反対しても、可決を阻止できない状況となっており、民主党執行部はこの機を逸してはならない。幹事長・輿石東が狙うように採決を延長国会などに先送りしては、すべてがご破算になりかねない。約300人もの議員が出席して開かれた民主党の税制調査会と社会保障と税の一体改革調査会の合同会議で出された反対論は、2点に集約される。それは「3党合意は公約違反で認められない」と「増税の前になすべきことがある」である。これは反対派の頭目である元代表・小沢一郎と元首相・鳩山由紀夫が主張してきたことを、おうむ返しに発言しているにすぎない。

鳩山は「年金の問題が、大きなうねりとなって政権交代が実現できたが、なぜか肝心かなめの年金制度が忘れ去られ、捨て去られようとしているのが、今日の状態だ。これでは国民の理解を得られない」と、マニフェスト死守論だ。その年金問題とは、あたかも一律7万円の年金を選挙が終わったらすぐにでも支給するという“引っ掛け詐欺”のことであり、例え実現しても40年後の話であった。正常な政党ならば、マニフェストを信用して、杖をついて、あるいは車椅子で投票した貧困層の老人達に、土下座して謝るべき問題であるはずだ。欺瞞の最低保障年金制度は「棚上げ」となって当然であり、これを掲げて、まだ選挙が出来ると考える方が異常だ。ルーピーのルーピーたるゆえんがここにある。一方、小沢は「増税の前にやることがある」論だが、民主党政権の3年間で小沢の“公約”はすべてやり切った。3年前に「政権の座につけば、財源などはいくらでも出てくる」として、16.8兆円を「ひねり出す」はずだったが、果たして出てきたか。タレント議員まで“活用”してパフォーマンスの仕分けをして、「スパコン2位ではいけないの」という“迷言”まで飛び出させてて、すったもんだの末に出てきた数字は、遠く及ばない。高速道路無償化の撤回もそうだが、3年間にわたって“やるべきことはやって”、このありさまなのだ。

 だからこそ消費増税に帰着したのだ。それに与野党協議では少子化対策や非正規社員対策で合意に達しており、現段階でやるべきことはやっている。小沢はこれを無視した議論を展開しているのだ。だいいち、最低保障年金制度と後期高齢者医療制度廃止は「税と社会保障」とは別次元の問題であり、やるべきことの範ちゅうに入っていない。このように小沢も鳩山も無責任きわまりない発言を繰り返している。3年前の308議席の夢が忘れられないかのようである。両人とも、思考回路が老人性の動脈硬直状態にあるとしか思えない。前回の総選挙では欺瞞と「風」に乗った有権者が、同じ言葉を繰り返せば、また乗って来るという甘い判断があるとしか考えられない。甘言を繰り返し、半可通のチルドレンを扇動し、「政局化」を図る。まさに、飽くなき権力闘争を目指す姿に他ならない。こうした論理破たんが明確になるにつれて、反対派や中間派も続続と落ちこぼれ始めた。

 筆者は、さきに反対投票に動く議員を「40人」と分析したが、マスコミもようやくその見方に定着してきたようだ。約80人の小沢グループの半数が強硬論者とみられる。今後小沢の多数派工作があっても、実際に反対投票に動くのは50数人がいいところだろう。たとえ80人全員が反対に回っても、民主主流、自民、公明、国民新党票で圧勝できるのだ。その潮流は阻止不能であり、造反はいずれにしても「無駄な抵抗」となる。衆院可決は動かないのだ。最高顧問・渡部恒三がついに「どうぞ小沢先生、鳩山先生、反対してください。国会はスッキリして素晴らしい物になります」と小沢・鳩山に“決別宣言”をした背景にも、たいしたことにはならないという票読みがある。一方中間派も、もともとふらつくから中間派なのであって、今度もふらつき始めた。賛成へと雪崩を打ちつつある。政調会長・前原誠司が決着を急がないのは、中間派への配慮がある。会議はガス抜きなのだ。中間派も既に党内論議は昨年末から続いており、この段階で小沢の政局化の意図に乗せられてはなるまい。自民、公明両党は21日までの採決を条件としており、これを党内論議で遅らせれば、3党合意はご破算になりかねない。会期内可決以外の選択肢はないのだ。
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