国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-06-29 20:16

(連載)再生可能エネルギー技術の革新に期待する(2)

角田 勝彦  団体役員
 原発に依存しない「グリーン経済」実現は困難である。2009年9月鳩山首相が国連で、「2020年までに1990年比25%減」という温室効果ガスの中期削減目標を華々しくぶち上げたのも、原発依存が背景にあった(原発依存度を下げると、再生可能エネルギー比率を35%と現在の予定計画中の最大にしてもこの目標の達成は無理である)。このように原発は、経済成長とエネルギーと環境のトリレンマ解決を導くと期待された。この困難を突破するには、省エネ技術に加え、再生可能エネルギー技術の革新が必要である。ソフトバンクの孫正義社長は5月10日ソウルでの講演で、人類は原子力発電をやめ太陽光などの再生可能エネルギーの利用を拡大するべきだと訴えた由であるが、「言うは易く行うは難し」なのである。7月1日と見込まれる大飯原発3、4号基再稼働はこの意味からもやむを得ない。

 ただし、世界各国及び我が国は再生可能エネルギー開発に努力している。国連環境計画(UNEP)などの発表によると、2011年に世界全体で太陽光発電などの再生可能エネルギー開発に投資された額は、前年から17%増加し、過去最高の2570億ドルに達した。総設備容量は1年間で2970万キロワットと大型原発30基分近く増え、総計で6970万キロワット(前年の1.7倍)に達した。風力発電も着実に増えた。日本の太陽光発電の容量は1年間で129万5千キロワット増え、490万キロワットに達した(トップのドイツの約5分の1。1280万キロワットのイタリアに次ぐ3位)。さらに今後の可能性は高い。政府は、再生可能エネルギー普及のため規制緩和(太陽光や地熱で場所選びの自由度向上)を行った。7月1日から再生可能エネルギーの全量買い取り制度も始まる。この制度は太陽光など再生可能エネルギーで発電された電気を一定期間決められた価格で電気事業者が買い取ることを義務付けるもので、買い取り期間は20年間とし、買い取り費用は電気料金に一律で上乗せされる形で、消費者が負担する。買い取り価格は42円と普及促進を主眼に高めに決められた。

 経済3団体は、すでに「需要者の負担増になるのではないか」との懸念を示している。しかしこれは再生可能エネルギーに関心を持つ企業にとってチャンスである。環境省の調査によると、2011年の再生エネ市場は1兆4606億円と、00年の約8倍に躍進した。経済産業省も全量買い取り制度により、周辺ビジネスを含めた再生エネ関連市場は、2009年の約1兆円から、2020年には10兆円に拡大するとみている。市場を目指し再生可能エネルギーと省エネ関係の技術開発が進むことが予想される。風力発電の開発は低迷していたが、浮体式洋上風力発電などの開発も行われよう。

 革新的技術で新エネルギー産業を作ろう。 5月29日閣議決定された環境白書は、東日本大震災からの復興に向け、風力、地熱発電や太陽光発電などの潜在能力が高い東北地方でこれらの再生可能エネルギーを導入するよう訴えるとともに、各地での節電やリサイクルの取り組み強化を提言している。東北を先駆けとして世界の新市場をつくることも可能である。「グリーン経済」も進展しよう。我が国企業及び個人の技術革新へ期待するものである。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム