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2012-08-03 10:33

(連載)シェールガスとシェールオイルによるエネルギー大革命(2)

藤井 厳喜  ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役
 天然ガスには、シェールガスの他に、非在来型天然ガスと呼ばれるものが2種類あります。1つはコールベッドメタン(CBM)と呼ばれる石炭層に含まれる天然ガスです。これは炭層ガスとも呼ばれています。他のもう1種類は、タイトサンドガスという固い砂岩に含まれた天然ガスです。これら非在来型天然ガスの世界的埋蔵量は実に膨大です。米国地質調査研究所が発表している上記3種の非在来型天然ガスの資源量の推計表を以下に掲載します。この調査によれば、北米だけで、非在来型天然ガスの資源量は8228兆立方フィートもあり、中東に埋蔵されている非在来型天然ガス3370兆立方フィートの2.4倍以上に達するのです。

 天然ガス革命の後を追うように、同様の革命的な変化が石油生産の世界でも現在進行中です。シェールオイルと呼ばれる非在来型石油が大量に発見され、アメリカにおいては、その生産が鰻上りに急増しています。シェールオイルは、シェールガスと同様、頁岩層あるいは硬質の岩盤層に含まれる軽質油やコンデンセート(粗製ガソリン)の事です。シェールオイルも又、固い岩盤層の中から石油を取り出す為、従来は経済合理性の点から開発は不可能であると考えられてきました。しかし、米国の中堅エネルギー企業は、シェールガス生産で蓄積した技術をシェールオイル開発にも応用し、その商業生産に成功したのです。この為、アメリカ国内の原油生産量は2008年を大底に、右肩上がりで急成長しています。
 
 2011年以来、アメリカ国内の原油生産量は、一日あたり50万バレルずつ増え続けており、現在、世界で一番原油生産量を増やしている国は、何とアメリカなのです。しかも、現在の技術水準で、シェールオイルの生産コストは、1バレルあたり20ドルから30ドルと極めて低くなっています。7月のニューヨーク原油先物市場における最も有力な原油価格指標であるWTI(West Texas Intermediate)の価格は、85ドル前後です。このシェールオイルの埋蔵量も膨大です。米ノースダコタ州にあるバッケン・シェールオイル油田の期待資源量は、単一鉱区だけで、4000億バレルと推定されています。サウジアラビアの確定原油埋蔵量は2646億バレルですから、その規模の膨大さが想像できます。現在、開発中の米国内のシェールオイルの埋蔵量は1兆バレルを超えると推定されています。この為、石油の全世界的な可採年数もゆうに200年を超えると考えられます。

 秋田県由利本荘(ゆりほんじょう)市の「鮎川油ガス田」で、日本国内では初めてシェールオイルが発見されました。その試掘が早ければ今年9月にも開始されます。開発を行なっている日本政府系の石油資源開発によれば、500万バレル程度のシェールオイルが埋蔵されているという見通しです。そうなれば秋田県全体で、日本国内で消費される石油の5%程度が生産出来る事になります。シェールオイルは、広範囲に分布するのが特徴であり、周辺地域でも今後、続々とシェールオイルの埋蔵地が発見される事になるでしょう。メタンハイドレートなどの開発と合わせて考えれば、日本のエネルギー供給の未来は非常に明るいと言えます。(おわり)
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