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2012-08-23 16:20

海外での日韓の出会いは肩肘張ることがなく、実に自然だった

山田 禎介  国際問題ジャーナリスト
 筆者自身はとくに韓国にかかわりを持つものではなく、出会った外国人には韓国系、韓国人もいたということに過ぎない。吉田重信氏の「日韓関係の現状を憂慮する」とのご意見の補足・参考にはほど遠いかも知れないが、筆者の米国での韓国系との交流経験を語ってみたいとも思う。東部のワシントン・バージニア首都圏には、多くの連邦政府OBがいるのが特徴だが、日本人にとくに印象的に残るのは、韓国系市民が十数万人もいることだった。委託のクリーニングで使ったある韓国系食料雑貨店でついでに、「キムチはないのか?」と聞くと、「アメリカ人客の中では売ることが出来ないのだ」と残念がり、より親近感を持ってくれた。

 バージニアの韓国・日本料理店の韓国系オーナーは、飯をスプーンで食べる多くの客の中、箸で食べる日本人の来店を喜んだ。ある日、駐車場がアメリカ人客の車で満杯で引き返そうとしたら、このオーナーは店から飛び出して来て、自分の車を近所の家に頼み、駐車スペースを確保してくれた。筆者ら2人でマグロの刺身を注文したところ、マグロのトロを日本でいえば数人前、大皿に盛り、「余ったら皿ごと持ち帰ってくれ」と、巧みな商売と、善意とをないまぜの見事な応対。アメリカの大型冷凍冷蔵庫のお陰で、一週間はトロを楽しんだ。

 「日本人が来てくれるのは、本当にうれしい」と口々で言った彼ら。外国での日韓の出会いは、それぞれ肩肘張ることがないせいか、実に自然だった。また、バージニアには韓国系の巨大スーパーがあり、日本の日用食品はなんでも揃った。海外にはない缶入りコーヒーも、枝付きの束ねたエダマメも手に入った。メンタイコの種類も、日本にはない豊富さで、このスーパーに通うことに飽きることがなかった。でも驚いたのは、日韓の食品がなんでもある一方、日本人がまったく知らない食品があったこと。大きな牙のある「セイウチ」の冷凍肉類がデンと並べられていた。これには朝鮮民族の祖先が北方系である証しと解釈した。

 ワシントン・レーガン空港脇の市民ゴルフ場でパートナーになったユン老人は「日本人か?」と聞き、そうだと知ると「日本語を使うのは何十年ぶり」と喜び、身の上話を始めた。「(北朝鮮の)清津生まれで、旧満州に渡り、関東(防衛)軍の印刷所で働いたが、日本軍の高級将校は尊大で、将校と兵隊はさらにもっと威張った。でも司令官の山下奉文は気さくだった」とユン老。山下司令官だけは副官経由でなく、自ら印刷用文面を持参し、出来上がるまで雑談もしたと、懐かしがった。ユン老は朝鮮戦争後アメリカに渡り、息子はシカゴ大を優等で卒業、ソウルの大学教授だと自慢もした。

 インドネシア・ジャカルタで付き合いのあった、韓国大使館のロンドン大出の若いエリート一等書記官は、礼儀正しい人物だったし、欧州連合(EU)本部のあるブリュッセルでインタビューした韓国EU担当大使は、わが英人助手によるタイプ打ち英文質問状を一読するや、「日本語でやりましょうや」とニッコリ、英人助手は浮いてしまった。もうユン老はご存命ではないだろうが、これらいずれの人も、懐かしい思い出となっている。なお、吉田重信氏の「日韓関係は普通の二国間関係ではなく、かつての宗主国と植民地とのそれに近い。もし、今でも英国とインドとの間に深刻な紛争が継続しているならば」というご指摘部分について、筆者は、日韓関係とは英国とインドの関係ではなく、むしろ英国とアイルランドの歴史関係に近いものと思っている。
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