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2013-02-10 13:40

(連載)マリ問題と国際介入(1)

水口 章  敬愛大学国際学部教授
 チュニジア、エジプト、リビアの政変後の動き、そして今回のアルジェリアでの人質事件と、北アフリカ諸国での内政不安が続いている。リビアの指導者だったカダフィ氏はかつて、自分が地位を失えば「地獄の釜の蓋が開くだろう」と述べ、この地域で起きる「力の真空状態」とその影響を予測した。そして現実に、リビアのベンガジでの米領事館襲撃事件、イスラム過激派によるマリ北部制圧、今回の天然ガス・プラント襲撃事件、サヘル地域での外国人誘拐事件の多発などが起きている。こうした状況に国際社会はどう対応すべきだろうか。以下では、このことについて、国際社会による主権国家マリへの介入を通し、考えてみる。

 まず、国際介入について基本的なことを確認しておく。国際関係の基本原則は、国連加盟国間においては「内政不干渉」「武力不行使」「領土不可侵」である(国連憲章2条4項)。この原則を踏まえて、仮に「他国の統治管轄への強制的な関与」の行為を「介入」と定義すると、歴史において以下のようにパターン化できる。まず「一方向的介入」である。これは、介入主体の国益によって物理的に、もしくは自己正当化した理論で介入することである。次に、「相互意志に基づく介入」である。これは、介入対象国の同意もしくは要請に基づき介入することである。最後に、「国際的な合意に基づく介入」であり、これは破綻国家(統治能力を喪失している国家)における人道危機の解決、および国連安保理の決議に基づいて「国際社会の脅威」を排除するために介入することである。

 さて、今回のアルジェリア人質事件の首謀者ベルモフタールが犯行声明で非難した、マリへのフランスの軍事介入は上記のどれにあたるだろうか。これはマリ政府がフランスに要請したものであるため、上記の「相互意思に基づく介入」に当たる。さらに、西アフリカ諸国が中心となって、マリ北部のイスラム過激派勢力の台頭を「脅威」として、国連安保理で武力行使を計画し(2012年10月)、実施を承認(同年12月)したものであるため、「国際的な合意に基づく介入」でもある。

 ここで、確認すべき点は、国際社会において「協調行動」がとれているかどうかである。近年、安保理では、シリア問題、北朝鮮問題などの例に見るように、中国およびロシアが欧米の提案に強い拒絶を占めることがある。しかし、このマリへの国際介入については協調行動がとられ、全会一致で決議案が採択された。おそらく、ロシアはチェチェン問題(国内のイスラム勢力との対立問題)、中国はアフリカでの「国益」に配慮したためと考えられる。(つづく)
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