国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-03-23 16:40

最近のシリアをめぐる動き

水口 章  敬愛大学国際学部教授
 2月28日、ローマで「シリアの友人たち」(Friends of Syria)が開催された。この会合で、ケリー米国務長官が、シリアの「解放された地域」の再生と食糧・医薬品の供給などに対する6000万ドル(約55億円)の非軍事支援を発表した。その後、3月6日にはアラブ連盟が閣僚級会合をカイロで開催し、「シリア国民連合」に対しシリアの代表として参加を認めるとともに、反アサド側への武器供与を表明した。現在、アサド大統領を支援するため、レバノンのヒズボラ、イラクの反米強硬派のムクタダ・サドル・グループなどのシーア派がシリアに入国し、「自由シリア軍」との戦闘に加わっている。

 構図としては、シリアを主戦場とする、湾岸アラブ産油国(指導体制はスンニー派)とイラン(指導体制はシーア派)との代理戦争となっている感がある。戦局としては、3月4日に反体制派がラッカ州を制圧し、アサド政権はトルコとの国境(904km)沿いの北部での支配力を失いつつある。注目されるのは、中部の西海岸地域(アラウィ派が多く住んでいる地域)とダマスカスを結ぶ回廊地域をアサド政権側が確保し続けられるかどうかである。このため、ホムス、ハマの攻防は激しいものとなっている。

 アサド大統領が属するアラウィ派をはじめ、体制側にいる利益集団に属する人々は、内戦の勝利にその全存在をかけていると見られるため、今後も厳しい戦闘が続くと予想される。シリア問題での外交交渉については、3月2日、国連の潘基文事務総長とブラヒミ特別代表がスイスで会談した後、アサド政権と反体制派の和平協議で仲介を務める用意がある旨を表明した。一方、アサド政権側は、ムアレム外相がイランを訪問しサレヒ外相と3月2日に会談を持った。そして、その後の共同記者会見は、アサド大統領が来年予定されている大統領選挙に候補者の一人として出馬すると表明した。また、アサド大統領自身も、英国のサンデー・タイムズ紙(3月3日付)のインタビューで、「われわれは誰とでも交渉する用意ができている」と語っている。しかし、辞任については「私が去れば戦闘が終わるという考えは、まったくばかげている」と述べ、その意思がないことを示した。

 シリア内戦では、現在、少なくとも7万人の死者と100万人の国外難民が出ている。この難民の主要受け入れ国であるレバノン、ヨルダン、トルコ、イラクでは難民支援の努力を続けているものの、限界に近い状況の国もある。トルコではすでに難民キャンプ建設で6億ドル以上を費やしているが、今後もこうした情勢を注視していきたい。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム