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2013-04-08 06:49

小沢さん、やっぱり政権は夢物語だ

杉浦 正章  政治評論家
 船橋競馬で3連単で史上最高19万倍の1900万円が出たことがあるが、賭けてもいい。「小沢の政権獲得」率は25万倍くらいだ。あり得ない。政治家というのは因果な家業で、尾羽打ち枯らしても、決してそれを認めてはならない。「やるやる詐欺」と言われようが、常にやる気を見せていなければ、完全に見放される。だから小沢一郎は、4月6日「もう一度同志を糾合し、政権を目指すのは夢物語ではない。次の衆院選挙で政権交代を目指す」と述べたのだ。もちろん小沢は、当選以来44年の政治家人生が、誰が見てもそろそろ幕引き段階にさしかかっていることなど、おくびにも出さない。小沢の政治家人生は自分だけでなく、他人を道連れにした人生だ。側近と言われる人が自民党時代から何人居ただろうか。政党を作っては壊し、派閥を作っては壊してきたのと同じように、小沢の側近は、「歌手1年、側近1年の使い捨て」であった。小沢の側近として“栄える”のはせいぜい1~2年だ。こうして100人を下らぬ国会議員が使い捨てにされてきた。

 使い捨てにする方もする方だが、される方も自業自得ではある。なぜ側近を最後には疎んじ遠ざけるかだが、「側近に忠誠を競わせた結果だ」という見方がある。しかし、これは甘い。政治家は所詮競うのが商売であり、競った結果遠ざけられるのなら、生存競争に負けただけだ。むしろかつて小沢が「あまり近寄られすぎるとうざったい」と漏らしたことがある。ここがポイントだ。小沢は政治家が接近しすぎて、思考方法まで察知されて、先を読まれることを、極単に嫌う政治家であったのだ。他人に手の内を読まれるのが、肌が粟立つほど嫌いなのだ。小沢は生来孤独の人なのだ。こうして側近を使い捨てにして生きてきた小沢の政治も、2012年には完全に行き詰まった。民主党離党に追い詰められて、小政党の党首になったのはいいが、判断力が落ちた。起死回生と打った手段が、脱原発を利用した女性知事との連携による新党結成である。滋賀県知事・嘉田由紀子をうまいこと持ち上げて、選挙に挑んだが、壊滅的な大敗北を喫した。ただちに褒めそやした嘉田を切って、生活の党を立ち上げたが、その勢力は衆院7議席、参院8議席。ちなみに政党支持率は各社ともゼロか、限りなくゼロに近い。やっと首がつながっているという状況だ。

 その小沢が復活のチャンスとみているのが、地元岩手の参院選挙だ。自民党は総務会長代理・二階俊博が潜行して民主党離党の前復興相・平野達男を推す動きに出たが、幹事長・石破茂の猛反対に遭ってつぶれそうだ。自民党は予定通り慶大ラグビー部前監督・田中真一を立てる流れとなっている。平野は「勝手連でも選挙を戦う」と一歩も退かない構えを見せている。これをみた小沢は4月6日、岩手入りして、「岩手選挙区においても、同志を擁立して戦う予定なので、力強いご支援を重ねてお願い申し上げる」と生活から候補を立てる方針を表明した。三つどもえの激戦を宣言したのだ。小沢にしてみれば、いわば自陣での戦いであり、「小沢一郎ここにあり」の存在感を示す最大のチャンスととらえたのだ。小沢側は平野と田中で票が割れるので、固い小沢票が有利になると判断している。しかし、岩手の現状を見れば、小沢王国の崩壊は現実のものとなっている。総選挙では自民党が4議席を奪回、民主2議席、生活2議席という結果だ。選挙区での小沢離れは急速に進んでいるうえに、岩手でも自民党人気はかってなく高いのが実情だ。しかし、参院選最大の激戦区となることは間違いない。

 小沢は「こういう時は、中央では何をしゃべっても記事にされないから、地方からやる。地方では私の発言はまだ地元紙が大きく扱ってくれる」と述べている。田中角栄が「政治家は上流から下流へが基本だ」と教えたのを忠実に守っている。上流の農村部から下流の都市部に向かって攻めるのだ。しかし、ここにきて小沢は「行け行けどんどん」の人生哲学を変え始めたようにも見える。その兆候の一つは、資金管理団体「陸山会」による土地購入をめぐる控訴審判決公判で、元秘書3人が再び有罪判決を受けたが、上告を断念したのだ。これまでの小沢だったら最後まで戦うのに、珍しく「退く」ことを選択したのだ。加えて、かねてから「老後は沖縄で魚釣りでもして暮らしたい」と述べていた小沢は、沖縄県宜野座村に別荘を建築中なのだ。海岸近くの岬に瀟洒(しょうしゃ)な別荘の全貌が見え始めている。カジキマグロを狙ったトローリングから、別荘近くでのアジなど小魚釣りまで楽しめる。もう一度同志を糾合して政権を目指すという発言とは逆を行く流れだ。政界は小泉進次郞が小沢を「倒そうとしなくても、いずれ倒れる。過去の人と戦っても、自民党は変わらない」と述べているように、はやく「過去の人」にしたいのだ。小沢は「過去の人」になるか、「夢よもう一度」を実現するか、のはざまで揺れているのだろうが、取り巻く現実は「過去の人」的になってきた。
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