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2013-04-11 15:22

(連載)キャロライン・ケネディ氏ではなく、軍人大使を(1)

河村 洋  外交評論家
 オバマ政権がキャロライン・ケネディ氏を駐日大使に任命することについては、日米両国で好意的に受けとめられているように思われる。ケネディ家の名前は、理想家のジョン・F・ケネディ大統領の悲劇的な伝説とも関わって、カリスマ的なロマンティシズムをかき立てる。歴史家のロバート・ダレク氏は4月2日放映のCBSニュースで「ケネディ氏が大使として赴任すれば、アメリカ文化の最善の要素を体現することになる」と論評している。

 ユーラシア・グループのジュン・オクムラ上級アナリストはさらに「情報伝達の高速化が進んだ現在では、結局のところ真の意思決定が行われるのは遠くの本国である。今や大使はほとんど象徴的な存在である。ケネディ氏の任命が示すことは、日米関係には大きな問題などなく、イギリスやフランスと同様の安心できる赴任先だということである」と述べている。確かにアメリカの歴代大統領は、ジョセフ・ケネディの例に典型的に見られるように、大統領選挙運動で資金調達に貢献した人物を、論功行賞として駐英大使に任命してきた。

 しかし、中国と北朝鮮による安全保障上の課題が重くのしかかり、沖縄の米軍基地問題が複雑化する中で、東京にはもっとプロフェッショナルな大使を着任させる方が望ましいとする意見もある。駐日大使は日本一国にとどまらないアメリカの戦略的利益を代表していることを忘れてはならない。ハワイからインド洋にかけての安全保障上の挑戦相手を見据えるうえで、世界の中で日本列島ほど理想的な位置はない。リチャード・アーミテージ元国務次官補が幾度にもわたってそうした戦略的価値を強調するのも当然である。新任の大使はこのことをよく理解すべきである。

 ケネディ氏の人気は高いが、外交にも行政にも経験がない。そのことに懸念を示す向きもある。 下院外交委員会に属する共和党のダナ・ローラバッカー下院議員は「初めてこの知らせを受けた時には、エイプリル・フールのジョークだとしか思えなかった。我が国の経済および国家安全保障は日本に対する善意に基づいている。キャロライン・ケネディ氏が駐バルバドス大使になるとでもいうのなら一向に構わない。しかし、日本ともなると何の経験もない人物にはとても任せられない」と述べている。大統領選挙の際にオバマ氏を支持したクライド・プレストビッツ経済戦略研究所所長さえも、この人事を批判的に評している。歴代大使と比較すると、キャロライン・ケネディ氏は「政界の重鎮でもなければ、外交事務にも国際情勢にも精通していない。また日本文化と日本語にも精通していない」と指摘する。(つづく)
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