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2013-04-16 17:13

(連載)武器貿易条約:不戦へのある進展(1)

角田 勝彦  団体役員
 武力攻撃、少なくともミサイル発射を大言壮語してはばからない北朝鮮は、振り上げた拳の下ろしどころに困ってきたようだが、もともと愚挙だからこそ、まだ油断はできない。危機をあおるマスコミの報道も依然として沈静化していない。確かに武力行使または武力の脅威により自国の欲望を満たそうとする旧来の考えは、集団安全保障体制と不戦が国際規範となった現在でも横行している。

 しかし、その反面、最近好ましい進展も見られる。国連における4月2日の武器貿易条約(ATT)採択と2012年の世界の軍事費の前年比減の発表がその例である。ATTは通常兵器の貿易を規制する初めての世界的ルールで、条約を批准した国が50カ国に達してから90日後に発効する。通常兵器の犠牲者は、紛争地や治安が安定しない地域を中心に世界で年間50万人ともいわれる。核兵器や化学兵器と違い、その国際的な取引きは「野放し状態」(国連)だった。1991年に任意の国際取引国連登録制度が導入され、2001年に国連で小型武器の違法取引を規制する行動計画が採択されたが、法的拘束力はなかった。なお、1997年に前コスタリカ大統領オスカル・アリアス氏を含む8名のノーベル賞受賞者が、武器の販売を規制するための国際的な行動規範を求める公開書簡を発表している。

 このATTを巡る正式交渉は、英国や日本、コスタリカ、オーストラリアなど7カ国が共同提案した2006年の国連総会決議を受けて開始された。2012年7月の国連会議は時間切れで決裂したが、13年3月28日まで行われた再交渉会議で、イラン、北朝鮮、シリアの3カ国の反対で合意による採択に失敗したあと、多数決で採択できる国連総会に持ち込まれて、今回の採択に至ったのである。

 条約の対象には戦車や戦闘機などの大型兵器に加え、自動小銃などの小型武器も含まれる。加盟国政府は国際人道法に違反する行為に使われる危険があるとみなされる場合などは輸出を許可できない。虐殺や戦争犯罪の恐れがあれば、輸出入だけでなく通過や積み替えも含むあらゆる移転が禁止される。闇市場への流出防止対策や、輸出入実績を年1回事務局に報告することも義務づけられる。弾薬や兵器部品も輸出を規制されるが、流出防止対策や報告義務の対象からは除外された。(つづく)
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