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2013-05-27 13:18

従軍慰安婦問題の本質は何か?

伊藤 将憲  日本国際フォーラム研究員
 「従軍慰安婦」を巡る橋本発言に全世界の批判が集まっているが、この「戦い」の本質は何なのだろうか。この戦いは「絶対に勝てない戦い」であるが、「永遠に続く戦い」ではなく、また、今「どうしても戦わなければならない戦い」でもないということを述べたい。

 まず日本のかけられている裁判は国際的人民裁判であって、もう一つの「東京裁判」である。そこで問われているのは「法と正義」ではない。第二次世界大戦の戦勝国にとって、「従軍慰安婦」について「強制連行はなかった」とか、「日本以外の国も同じことをしていた」と認めることは、第二次世界大戦後の新秩序を自己否定することになる。それは、日本がもう一度世界大戦を戦って勝利しない限り、覆すことのできない戦勝国側の存立の基盤をなす大前提である。だから、この戦いは日本にとっては「絶対に勝てない戦い」なのである。

 次に、これは「永遠に続く戦い」ではないことを述べたい。戦勝国米英ソ中のうち、大英帝国、ソ連および中華民国は既に崩壊しており、いまも実質的に生き残っているのはアメリカだけである。大英帝国には昔日の面影なく、ロシア連邦と中華人民共和国は、ソ連と中華民国の歴史的遺産を盗んで、継承しているだけである。しかもソ連の対日戦争については、それが第二次世界大戦の一部であったかは、必ずしも自明ではない。平家物語ではないが、「盛者必衰のことわりあり」である。関ヶ原の戦勝藩と敗戦藩を差別した徳川幕藩体制も、永遠には続かなかった。第二次世界大戦後に登場した世界秩序も、「冷戦時代」を経て「ポスト冷戦時代」に入り、このまま永遠に続く筈はない。そう考えれば今、日本は「時間」の要素を勘案した大戦略を持つべきなのであって、このタイミングで日本がアメリカを中国の側に追いやるような「戦い」をしかけるのは、愚の骨頂である。

 最後に問いたいのは、「この戦い」は今「どうしても戦わなければならない戦い」であるかということである。「どうしても戦わなければならない戦い」とは、自存自衛のための戦いであるが、今の日本にとって、「従軍慰安婦」問題の是非を世界に問うことは、賢明かつ必要か、それは「どうしても戦わなければならない戦い」か、ということである。他にやるべき優先事項は山ほどあるのではないか。(注:投稿者の個人的見解である)
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