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2013-08-06 10:38

(連載)安倍首相が先導したPUBLIC DIPLOMACY(2)

鍋嶋 敬三  評論家
 それから30数年を経てアジア太平洋の情勢はがらりと変わった。中国が世界第2の経済大国として米国と「太平洋を二分」しようともくろみ、軍事力の急速な拡張を背景に南シナ海のほぼ全域を自国の領海と主張、ベトナムやフィリピンとの厳しい対立を招いた。東シナ海の尖閣諸島への領海侵犯もこの延長線上にあり、地域に大きな緊張を作り出している。他方、東南アジア諸国は中国との経済関係が一層強まり経済的依存度が深まる一方である。

 1月の安倍首相歴訪では自由、民主主義、基本的人権等の普遍的価値の定着や、力でなく法による支配、自由で開かれた海洋ーなどを柱とする対ASEAN外交5原則をインドネシアで発表した。中国の力づくでの海洋進出をけん制したものだ。7月歴訪の柱は(1)インフラ整備、環太平洋経済連携協定(TPP)などで経済の活力を取り込む、(2)海洋の安全保障、国際法の順守による地域の平和と繁栄、(3)安倍政権が目指す課題への理解、であった。

 安倍首相は一連の首脳会談で憲法改正について、平和主義、国民主権、基本的人権について当然の前提とした上で、日本にふさわしい憲法のあり方を議論していること、集団的自衛権については国際的な安全保障環境の変化を踏まえて日本の安全を確保し、日米同盟、地域の平和と安定に貢献する観点から進めると説明した。マニラでの内外記者会見で外国通信社から「『軍国主義の台頭』と懸念されないか」と質問を受けた首相は「日本以外のすべての国々が当然行いうることの一部を日本でも可能にしようというもの」であり「諸国の誤解なきよう丁寧に説明していきたい」と答えた。

 太平洋戦争の舞台となった東南アジア諸国は日本には友好的であるものの、厳しい国民感情も底流には潜んでいる。岸田文雄外相も5月から7月にかけて15カ国との会談をこなし関係強化に努めた。首相、外相が先頭に立って日本の主張を世界に浸透させる努力が必要である。9月の国連総会には世界の首脳が集まる。シンガポールのリー・シェンロン首相が安倍首相に来春のアジア安全保障会議(シャングリラ対話)への出席を招待した。世界の指導者、オピニオンリーダーが集まるこの対話への出席は日本によるPUBLIC DIPLOMACYの大きな一歩になるだろう。(おわり)
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